連載 齋藤薫の美容自身stage2

“将来の不安”の有無が、人生の形を決めていた!

公開日:2015.04.23

人気連載「斎藤薫の美容自身 STAGE2」。 毎月第2水曜日更新。

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まったくよけいなお世話だけれど、AKB48から次々“卒業者”が出て行く事実に対してあれは本当に自分の意志なのだろうかと思ったりする。“先に不安はないの?”なんて勝手に心配している。

いや、ないわけはない。大企業の“役員”を辞めてフリーになる、みたいなものなのだから。もちろん皆まだ驚くほど若いから深刻さはないのだろうし、“天下のAKB”時代に貯めた自信がまだ続いているから平ちゃらなのかも。いや、あの“秋元さん”のことだから、主要メンバーには卒業後の心の整え方を早くから教えていたかもしれない。AKBを出たらもっと大ブレイクするかもしれないが、忘れられてしまうかもしれないことを……。人間なぜ不安になるかと言えば、言うまでもなく将来が今よりひどくなる可能性に恐怖を感じるから。だから逆に言えば、“将来は今よりきっと悪くなる”とあらかじめ覚悟していたら、不安なんてなくなる。今が人生のピークとわかっていれば、不思議に不安が和らいでくる。人間、今よりもっと、という欲を持つから不安が押しよせるのだ。

まったく逆に、今がドン底と思えば後は良くなるしかないから、希望ばっかりでやはり不安は生まれえない。そもそも不安なんてオバケが怖いのと一緒で、実体のない未来を、一人で恐れている“感情だけの”。そんなものに捕らわれて生きるのはまったくバカバカしい。

なのに政府の調査だと、’80年代に比べて今の日本人は不安の量が平均2倍にもなっているという。“何だかいつも不安”な人が減らないのだ。ただ、とても不思議なことに、2011年以降、天災に対する不安が一気に目を覚ましたせいか、逆に自分自身の人生に対する不安は一時的に減ったのだとか。確かに人間、体調に大きな不安を抱えたりしたら、“私は果たして幸せになれるの?”なんていう不安は入り込めなくなる。人間いつでも何かしらに不安を見つけてしまう生きものだからこそ、新しい不安を持つと古い不安を忘れるのだ。だからまず、不安でうまく生きられない人は、そんな不安のメカニズムを知ってほしい。多くを望まなければ、逆に希望だらけなら、人は不安にはならない。Aの不安が募れば、Bの不安は消える。そしていちばんいけないのは、不安を心の中だけでじっくり育ててしまうことだって。

たとえばAKBを卒業するのも不安、でもAKBに居続けるのも不安、居続けて、順位が下がり続けることが不安、そう思ったらまったく身動きできなくなる。そういうふうに八方塞がりになった時は、やっぱり前に進むしかないのかもしれない。なぜならAKBにとどまった時に生まれる不安は、これまでの体験で何となく想像のつくもの。それが怖いなら、もう先に進むしかないのだ。

逆にこんな見方がある。物事を不安に思うのは、前進の前ぶれであり、改革の第一歩であるという。不安はよく言えば想像力があり、問題意識を持てる人だけの感情、状況判断ができるから不安も生まれるのであり、能天気な人は不安になれない。反対に、賢い人ほど、悪いことが起こった時に対処できるように“心の準備をする”はずで、衝撃や落胆を小さくするための準備、未来を良くする準備……それが不安の正体なのだと。だから前に進まなきゃ、まったく意味がないのである。身動きせずに立ち止まったまま不安をこねくりまわして、大きく育ててしまうことがいちばん“愚か”なことなのだ。

どっちにしろ、将来はやってくる。否応なしに明日になり、来年になり、アッという間に3年後がやってくる。しかもやってくる未来は予想外であることがとても多い。明日、すごい出会いがあって結婚するかしれない。そうなれば人生なんて180度変わってしまう。いやでも変わっていくのだ。自分も周りの環境も、日本も世界も地球もつねに変化していくから、人間進むべきなのである。なのに、人はまったく“今のまま”を想定しながら未来を考えてしまう。“今の自分のまま”で生きていくと思いこむから、先が不安なのだ。人生のことも家庭のことも仕事のことも、歳をとることまで不安になるのだ。

たとえばこのまま結婚できなかったらどうしよう……独身なら誰もが持つ不安である。でも結婚が決まったばかりの人はみんな口を揃えてこう言う。決まる時は本当にアッという間に決まってしまって、自分でもビックリ。あんなに不安に思っていたことがウソみたい。そう、明日には何があるかまったくわからないことを、知性ある女ほど忘れているのである。よく当たる占い師にさえ予想がつかないことが起きるかもしれないのに。

しかし、占いに行って自分の未来を覗くのはもちろん悪いことじゃない。「大丈夫。あなたはいつか結婚します」と言われれば、不安は7割くらいに軽減する。「あなたは一生ひとりで生きた方がいい人です」と言われても、不安は減る。人間、先がわからないことがイヤなのだ。

なのにどこまで行っても消えないのが不安、生きている限り不安はつきものと割り切ってしまってほしい。その上で不安の正体を知り、不安を軽くする方法を試しながら前へ進んでいってほしい。ちなみにとても簡単に不安を減らす方法のひとつは“歩くこと”だそうである。もちろん走ってもいい。エンドルフィンが分泌されるランナーズハイも、すなわち不安を消すものに他ならないから。ともかく体を動かすこと。これは自らの体の中で生命感を自覚することになるからだ。人にとっていちばん大きな不安はやはり“死”に関わることだからこそ、「私、生きてます。こんなに元気に!」という自覚が、こまごまとした小さな不安を吹き飛ばしてくれるのである。

そうそう、もうひとつの“不安を軽くする方法”は、今抱えている不安より、もっと深刻な不安を次々に思い出すこと。心の中で、とことん大きな不安に不安を入れ替えていくのだ。最終的には、次の大地震が起きたらとか、今、病気になってしまったら……。まさしく“生死”に関わる不安まで、大きなものに変えていく。よく言うように、宇宙を思うと、自分の悩みが恐ろしくちっぽけに思えてしまう、というあの手法。

たぶん不安は、考えても考えても解決はしない。9割は取り越し苦労なのだから。従って、くれぐれもその不安の中にそれ以上入り込まないよう、意識を別の事にそらせたいのだ。“地球最後の日”を持ち出したってかまわないから。わりに多くの宗教が“終末思想”を持ち出すのも、身近な不安を取り去るためなのだろう。どちらにせよ“悩み”は、基本的にそう長く続かずに解決されるものだが、“将来への不安”はその未来が過ぎるまで続く。だから感じるたびに軽くする工夫を。不安が頭をよぎったらその場で小さくしたい。不安に思うから、準備ができて未来がより良くなると考えるくらいに、不安を上手に利用する人が、いちばん人生うまく行くのである。

人は”今の自分のまま”で、この先もずっと生きていくと思いこむから、将来が不安になるのだ

Edited by 齋藤 薫

公開日:2015.04.23

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