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【特別寄稿】一穂ミチが話題作『スモールワールズ』で投げかける「大丈夫」

2021.04.22

発売前から全国の書店員さんの間で超ウワサ ベールに包まれた著者の話題作ついに刊行!

発売前から評判の高い小説『スモールワールズ』。著者の一穂ミチさんはBLジャンルでは売れっ子の作家だ。2020年の本屋大賞を受賞した凪良ゆうさんもBLの出身。注目の才能がまた一人、新ジャンルに挑戦する。『スモールワールズ』発売を記念して、著者に特別エッセイを寄稿してもらった。

発売前から全国の書店員さんの間で超ウワサ ベールに包まれた著者の話題作ついに刊行!

発売前から評判の高い小説『スモールワールズ』。著者の一穂ミチさんはBLジャンルでは売れっ子の作家だ。2020年の本屋大賞を受賞した凪良ゆうさんもBLの出身。注目の才能がまた一人、新ジャンルに挑戦する。『スモールワールズ』発売を記念して、著者に特別エッセイを寄稿してもらった。

異例づくしの話題作が発売!

発売前の見本(プルーフ)が足りなくなって、3回も重版をしたという、話題の新作『スモールワールズ』。見本なので通常は少部数を配るのみだが、書店員をはじめ、読んでもらった関係者の間で評判が評判を呼び、大量重版したという。

書店員のもとにたくさんの出版社からおくられてくる大量の見本の中から読んでもらえるだけでもスゴいことだが、それが足りなくなるほど欲しいという声が殺到したのは異例といえるそう。

特設サイトに寄せられた、たくさんのコメントを読むだけでも期待が高まる小説『スモールワールズ』の発売を記念して、著者の一穂ミチさんにエッセイを寄稿してもらった。

『スモールワールズ』

以下は一穂さんの寄稿となる。

『スモールワールズ』発売記念 エッセイ
「大丈夫」って何ですか
一穂ミチ

VOCEのwebにエッセイを載せていただくことになった。こういった美容系メディアは美容院で雑誌を読む程度でなじみが薄く、さっそくサイトを覗いてみると、何もかもがきらきらして見えた。わたしことナチュラルボーンくすみ系は自然と後ずさってしまう彩度と明度だった。この文章がどういったカテゴリに掲載されるのかさえわからないけど「燻製VOCE」とかあればなじめそうなのにと思う。

スモールワールズ

過去は不変、未来は不信

四月、「スモールワールズ」という本を出してもらった。担当編集者は、ツイッターにこうつぶやいた(一部抜粋)。

『後悔しても変えられない過去や、どうにもできない未来があっても丸ごと受け止めよう、この小説があれば大丈夫と大袈裟じゃなくて思えた』

言い過ぎです、と思った。過言です。せめて「(※個人の感想です)」ってつけないと。「(※効果を科学的に保証するものではありません)」とか。こめじるしさえつけておけば、大概のことは見逃してもらえる気がする。もちろんプロモーションにつき盛って盛られてナンボだというのは重々承知だし、仮に「まあ、悪くはないと思いますけど」なんて書かれた日には部屋の床に魔法陣を描き始めるだろう。何か喚ばずにいられない。

でも、大丈夫って何だ、と思ってしまう。だってわたしは全然「大丈夫」じゃない。霊感あるとかフカシたリアル中二時代の後悔で定期的にのたうち回っているし、法的にはシロでも人道的にオフホワイトな黒歴史はとてもこんなところに書けないし、出先のトイレでスカートの裾をレギンスに巻き込み気づかないまま歩くのは日常茶飯事。いつまで文章の仕事がもらえるのか、もらったとてちゃんと書けるのか、未来ももちろん見えやしない。「死ぬこと以外かすり傷」などと豪語できるはずもなく、戦国時代じゃねぇわとぼやきながら日々を生きるだけで気分は瀕死だ。ドラクエで言うと、ウインドウの表示が常に黄色い。仕事が途切れれば「ねんきん定期便」を確かめてしまうし仕事が詰まれば検索バーに「戸籍 消す 飛ぶ」と入力する。今は海外逃亡もできない、っていうか一年くらいパスポートが見つからない。怒らないから早く出てきて。

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かたちなき「大丈夫」をもとめて