「ダサピンク現象」ならぬ「ダサグレー現象」
男性向け化粧品のパッケージは、黒かグレーの単色が多いです。その色づかいは、スーツとそっくり。商品名も英単語一語が多く、シンプルで無駄がないことを示しています。メーカーにかかわらず、広告も驚くほど似ています。共通するキャッチコピーは「デキる男」。「時短」「常識」がそれに続きます。忙しいビジネスマンが、時間のない朝に身だしなみとして使うイメージでしょうか。
つまり、ほとんどの男性向け化粧品は、仕事道具として作られているのです。それらは、生産性を高めるツールというコンセプトを共有しています。それにしても、なぜこれほどそっくりなのでしょうか?
「ダサピンク現象」という言葉があります。ジャンルを問わず、「女性ならピンクが好きだろう」という先入観や、意思決定の場に女性が少ないことが原因で、本来は他の色でいいはずのアイテムがやたらとピンク色になってしまう現象です。
ここでは「ダサグレー現象」を指摘したいと思います。それは、男性向け商品が「男性なら黒かグレーが無難だろう」という先入観や、意思決定の場に多様性が欠けることが原因で、本来は他の色でいいはずのアイテムがやたらと黒やグレーになってしまう現象です。

(左から)
メラノCC 薬用 しみ 集中対策 美容液 20㎖ ¥1180/ロート製薬
The Ordinary “ビュッフェ” マルチテクノロジー ペプチド セラム 30ml ¥1788
LUSH 艶肌ドロップ 45g ¥1927
「美容液はまだまだ模索中です」
「ダサピンク現象」と「ダサグレー現象」の背景にあるのは、固定したジェンダー観です。女性は華やかで、楽しそうで、可愛くて、趣味的である。男性はキリッとしていて、仕事第一で、無骨で、実用的である。こういった価値観によって、実用的でいいはずの女性向け商品がやたらと趣味的になり、趣味的でいいはずの男性向け商品がやたらと実用的になります。つまり、この二つの現象はセットなのです。
多くの男性向け化粧品は、必要以上に実用的に作られています。本来かなり趣味的なものであるはずの美容が、いつの間にか「デキる男の常識」になってしまっている。男性たちがスキンケアを面倒だと感じるのは、これが理由だと私は考えています。つまり、まるで美容が時間外労働みたいだから面倒なのです。

(左から時計回りに)
キュレル 潤浸保湿 乳液 120㎖ ¥1800/花王
オルビス クリアモイスチャー 50g ¥1700
オードムーゲ 薬用スキンミルク 100g ¥1200/小林製薬
オードムーゲ 薬用スキンクリーム 40g ¥1200/小林製薬
LUSH コスメティックボーイ 45g ¥3340
「乳液やクリームも気候に左右されますよね」