女性の文化をネタにすると
伝わらないとされてきた過去はある
――準備ということで言うと、ネタの話になるんですが、賞レースのことっていうのは、どうしても今の時代避けては通れない感覚もあるかと思います。そういうことに対して、今、どんな風に捉えていますか?
ヒコロヒー「そうですね。賞レースには勝たないといけないとは思うんですけど、個人の思想としては、賞レースにそこまで執着があるわけではないんです。でも勝ってみて初めて語れることもあるでしょうしね。時間がかかってもいいからネタを認めていただきたいと思っています。個人的には、それが認められるきっかけが賞レースじゃなくてもいいんだけど、でもやっぱり芸人としてやっていくのであれば、そこで認められないといけないのかなと」

フェミニズムにひるんで
隠してしまう発想自体がなかった
――ヒコロヒーさん以前とヒコロヒーさん以降で考えると…
ヒコロヒー「なんですかそれ(笑)。“堤以前と堤以降みたいな!」
――堤幸彦さんがテレビドラマ界に与えた影響を例えたワードですね(笑)。いや、ヒコロヒーさんにも、そういうところはあると思ってるんですけど、今までって男性主導の社会に違和感を持って、それをネタにすることはあっても、それがフェミニズムにも関係することです、ジェンダーギャップによるものですということは明言してこなかったと思うんです。そこをきっちり紐づけてる人ってヒコロヒーさんが初めてだと思うんですけど、そこに関しては、何か思うところはありましたか?
ヒコロヒー「『あ、みんなしてなかったんや』っていうくらいの感じですかね。変にひるまなくていい話じゃないですか、本来は。そこをひるんで隠してしまう話にするという発想自体がなかったです。自分とみなみかわさんの漫才も、あきらかにジェンダーバイアスからきているし、隠そうとか違う言い方をしようということは思ってもみなかったことで。笑ってもらえたらそれでいい、っていう感覚でした」
――そうだったんですね。私たちのように、お笑いを批評したりもする方からすれば、そういうヒコロヒーさんの姿勢に注目して記事とかにすると、その一面だけを過剰に独り歩きさせてしまうような感じもしてしまってたんです。今は少なくなりましたけど、以前はもうちょっとそういう空気で捉えられてしまうところはあって。
ヒコロヒー「それはやっぱり、自分が芸人として、現場現場でちゃんと結果を出すことでしか変えていけないというか。今はそればっかり求められているわけでもないし、いろんなお仕事をもらって、その一個一個に結果を出していけばいいし、何で注目してもらっても、それはありがたい話なので。そこから先は自分の問題だと思います」
――そうなんですね。すごく心強いですね。

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圧倒的な芸を身につければ
キャラとして消費されない