脚本家・坪田文の「ドラマから見える明日」

成功の影にヴィジョンあり。ドラマ『RISKY』で共有された3つの指針

2021.05.24

『コウノドリ』や『おじさんはカワイイものがお好き。』などの人気ドラマだけでなく、『HUGっと!プリキュア!』など、アニメ作品の脚本も手がけてきた坪田文さんの特別寄稿。こめられたメッセージを知れば、作品だけでなく、社会の見え方がちょっと変わるはず!? 第2回目は、先日最終回を終えたばかりの人気ドラマ『RISKY』について。

『コウノドリ』や『おじさんはカワイイものがお好き。』などの人気ドラマだけでなく、『HUGっと!プリキュア!』など、アニメ作品の脚本も手がけてきた坪田文さんの特別寄稿。こめられたメッセージを知れば、作品だけでなく、社会の見え方がちょっと変わるはず!? 第2回目は、先日最終回を終えたばかりの人気ドラマ『RISKY』について。

映像も、舞台も。一本の作品を世に送り出すには、大勢の人がかかわっています。“本打ち”と呼ばれる打ち合わせを経て、皆で出し合った意見を元に、脚本を作成します。自分からは出てこないようなアイデア、そして感想をもらえるのはとてもありがたく。ただ、これにはデメリットもあります。全く違う意見が色々な方向から飛んできてしまう。そうなると、まとめるのも一苦労。まさに「船頭多くして船山に上る」状況が爆誕する事もしばしばなのです。

不完全燃焼するプロジェクトの特徴とは?

それを防ぐため、ドラマというプロジェクトには最終決定者、リーダーとしてプロデューサーという職がある。

が、残念ながら“決められない”責任者というのはどの業界にも存在するわけで。さまざまな意見に翻弄され、「こちらを直せば、こっちがくずれるがな!」と、決して完成には立ち会えないサグラダファミリアに着手するような気持ちとなり、最終的には「よくわからないけど、なんか形にはなったの?」と不完全燃焼のままプロジェクトが終了することも。これは、本当に悔しい!

なぜ、そんな事態が起きるのか? 今までの経験から考え、「なんとなく」で始めたことは「なんとなく」の結果を生みやすいという結論に達しました。つまり、まずプロジェクトを成功させるのに必要なのは、かかわる人すべてにしっかりと『目指すべきゴール』が共有されていることなのだと。

初めに提示された3つの指針『RISKY』

先日、最終回を迎えたドラマ『RISKY』はプロデューサー陣が作品に求めるビジョンが非常に明確でした。

『RISKY』は、端的に言うと“復讐物”であり、ドロドロと愛憎渦巻くサスペンスです。最近はほのぼのしたコメディを任されることが多かったので、この仕事を引き受けること自体がまさにリスキーな選択だったのですが、依頼をしてくれたプロデューサー女史から受けた説明がとても明確だったので、この船に乗り込もうと思う事ができました(あと、もちろん原作がとっても面白かったから!)

プロデューサー陣から最初に提示された3つの指針は以下の通り。

1.作品はもちろん、宣伝物まで徹底的にビジュアルにこだわる

パッと見で、“ドロドロサスペンス!”と、わかりやすすぎるアプローチはしない。とにかくスタイリッシュに、美しく。それを撮影できる監督をきちんと起用。ドラマ本編だけのこだわりではなく、ポスターなどの宣伝物もヴィジュアルをスタイリッシュに作り込む。メイクも衣装も、キャラクターの表現だけにとどまらず、作品のコンセプトを表せるものまで昇華させる。

2.話題先行にならない演技派俳優のキャスティング

「こんなやついないだろ」と思われちゃうピーキー(感情表現が激しく、性格にクセがあるよう)な行動を大きく表現して、それを楽しんでいく方向性もあったけれど、今回はキャラクターにリアリティを持たせる方向にはじめから決まっていました。つまり、話題性や人気だけでなく、“生きた人物”をきちんと表現できる役者さんをキャスティングする必要がある。

少しコンセプトの話からはそれますが、主人公のひなたが萩原みのりさんに決まった時に思わずガッツポーズ。ひなたは、元々の性格を押し殺して姉のために復讐を決行する難しい役なのですが、期待通り見事に演じ切ってくれました。特に萩原さんの回想シーンと現在のシーンの演じ分けをじっくりと見ていただきたい。シーンの順番通りに撮影している訳ではないので、この切り替えを完璧にできるのは凄いことなのです。役を憑依させた演技なのか、綿密に計算した演技なのか、それともまた違うアプローチなのか、機会があれば詳しく聞いてみたいところ。

そして驚かされたのが、光汰役の宮近海斗(Travis Japan/ジャニーズJr.)さんのお芝居。ステージで歌ってらっしゃる時は、「大きな目がキラキラ輝いてまさにスターだなぁ!」と拝見していたのですが(役を研究するために見た『夢のHollywood』にハマっちゃった。Travis Japanさん凄いです!)、役に入ると、スッと目の色が変わるんですよ。葛藤を抱えつつ、復讐の波に飲まれる光汰の瞳に変化している。可愛く『ゾクキュン♡』とポーズを決めているあなたはいったいどこに行ってしまったの!?

萩原さんも宮近さんも、間違いなく今後も様々な作品で大活躍される俳優さんだと思います。

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3.ファンを裏切らないドラマオリジナルの結末

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