連載 メンズメイク入門

妻と一緒に、初めての“勝負アイシャドウ”選び

公開日:2021.05.20

妻と一緒に、初めての“勝負アイシャドウ”選び

「男性もメイクは当たり前!」「男性も美容感度が高まっている!」。そんな雰囲気を感じはするけれど、本当に社会はそうなっているのでしょうか? おそるおそる歩を進めてきた筆者がまさかのマンネリ期に突入!? そんな自分に喝を入れるため一念発起。パートナーと共に、いざ、勝負アイシャドウ探し!

妻と一緒に、初めての“勝負アイシャドウ”選び

「男性もメイクは当たり前!」「男性も美容感度が高まっている!」。そんな雰囲気を感じはするけれど、本当に社会はそうなっているのでしょうか? おそるおそる歩を進めてきた筆者がまさかのマンネリ期に突入!? そんな自分に喝を入れるため一念発起。パートナーと共に、いざ、勝負アイシャドウ探し!

【執筆したのは……】

鎌塚亮
1984年生まれ。会社員。ある日「そういえば、自分はラクに生きたいだけだった」と気づき、セルフケアについて調べ始める。メンズメイク初心者。
Twitter: @ryokmtk
note: 週末セルフケア入門

アイシャドウでマンネリをぶっ壊す

本当はそこにあるべきなのに、まだ存在していないものに気づく。そのためには、経験が必要です。ある程度メイクについてインプットをしたとき、自分に不足しているものに気が付きました。それは「気合い」です。

正直に言うと、メイクを始めた当初の興奮は薄れてきていました。知らないことだらけだった時期は終わり、スキンケアや肌色調整は生活の一部になった。すると、急にすべてが面倒くさくなってきます。もともとが飽き性。マンネリが来たのです。

しかし、メイクの世界がまだまだ深いことは分かっていました。BTSを始めとしたK-POPアーティストの影響もあってか、メディア上でも男性向けのスキンケアにとどまらず、メイクアップの特集が増えています。そこで手に取ったのが、男性芸能人のメイクアップ写真が掲載された雑誌。誌面を飾っていたのはTravis Japan。各メンバーの個性に合ったメイクが素敵で、(もともとかっこいいのはもちろんですが……)華やかなオーラがビシバシ伝わってきます。

「これが気合いか……」

そして自分の手持ちの化粧品に眼を落とすと……なんか、全体的に茶色い。野菜の足りない晩ごはんみたいになっています。ようするに、色が少ない。無難で、生活感が溢れている。

つまり、バキバキに気合いを入れ、キメキメで出かけるためのカラーアイテムが無い!

そこで私は、分かったような気になっている自分をぶっ壊すために、派手めのアイシャドウに挑戦してみることにしたのです。と、威勢のいいことを言ってはみたものの、小心者の私。これまでとはワンステップ異なる「カラーメイク」の世界への水先案内人が必要だろうと、妻に頼み込み、買い物についてきてもらうことにしました。

ふたたびコスメ専門店で迷子

以前にも訪れたことのある、コスメ専門店へやって来ました。店内には男女の二人連れはたくさんいました。しかし、おもに男性が女性の買い物に付き合っているパターンです。その逆は見受けられず。もちろん、女性同士は多いです。

若い男性同士もいました。彼らは、二人連れで「これ、いいらしいよ」と話しながらスキンケアコーナーを物色しています。思わず観察すると、二人は「まさに今!」の髪型で、目元にブラウンのアイカラーを非常にうまく使っていました。

以前に比べて、メイクをしている男性が増えました。みんな上手い。なかには「何年も前からやっていたの?」と思わされるレベルの人もいます。

カラーメイクといえば、アイシャドウやリップ、チークなどですが、スキンケアとはブランドがガラッと変わります。ふたたび迷子に戻った私は、先達である妻について店内を回りました。

アイシャドウと一口に言っても、数百円のプチプライスブランドから、必殺のハイブランドまで様々。「これは学生向けかな」「このブランドは環境にも気を使っていて、いい感じだね」と説明してくれる妻ですが「なんか……多い……」と早くも疲れ始める私。驚くべきことに、ひとつのブランドでアイシャドウを三十色以上揃えているところもあります。色鉛筆か?

私は祖母にプレゼントした「大人の塗り絵」を思い出しました。重ね塗りをしたり、陰影をつけたりと、けっこう難しかったことを覚えています。そんな塗り絵を祖母は器用に塗り分けていましたが、あれはメイクの技術に由来していたのかもしれません。

「無難」を捨てよ!

「アイシャドウをお探しですか?」

物腰やわらかく、メイクは鋭く決まった店員の方に声をかけられます。

「あっハイ! 大丈夫です!」

なぜかビクッとしてしまう我々。

「『夫のアイシャドウを探しているんです』って言ってみればよかったかな?」と妻。楽しそうです。

言ってみればどうだったでしょう。相手もプロ。「そうなんですね、どんな雰囲気のものをお探しですか?」と返してくれたかも。

妻は、平べったい綿棒のようなチップと、クレンジングを染み込ませたガーゼを駆使し、私の顔でアイシャドウをテストし続けます。「どうだ!」とか「この色、今っぽい!」とつぶやきながら、眼は真剣。

複数色を重ね、グラデーションを表現するパレットは使いこなせる気がせず、単色を中心に探しました。アイシャドウにはラメが含まれているものもあれば、あえてザラッとした質感を残しているものもあります。まさに顔料。肌の色に近いオレンジ系は、メイクアップしている感じが少なく、使いやすそうです。しかし、今回のテーマは「気合い」。これでは足りんのです。

面白かったのは、「無難」にしようとすると失敗することです。男性のメイク用品でおなじみのブルー、ブラック、グレー、「ダサグレー三原色」を試したのですが、いずれもうまくいきません。逆に、色気が出すぎてしまう。ブルーはさわやかなイメージかと思いきや、まぶたに塗ると醸されるのはむしろ「夜の街」っぽい印象でした。

ブラックをまぶたの内側に仕込むと「おお……K-POP……!」といった雰囲気が出せたのですが、私が求めていたものとは少し違いました。なかなかむずかしい。

レモンイエロー、お前だったのか!

ブルー系はまぶたにつけると重い、ラメ系は光りすぎる……と試行錯誤していたとき、まぶた全体ではなく「目尻にだけ」色をのせると、軽くあしらった程度になることがわかりました。

「あ、この色いいかも」

そうしてたどり着いたのが、青みがかったレモンイエローでした。

「いいじゃん! でも、こんなに攻めた色でいいの?」

たしかにパキッとした色です。しかし、変に無難な色よりも、鮮やかな方が断然決まる気がする。

「そうか、モードっぽくすればいいんだ……! 跳ね上げアイラインの要領で目尻に入れてみるか」と妻。

なるほど。そう言われてみれば、私はかわいくなりたいわけではないし、美容誌のメイクを真似したいわけでもありません。むしろ、男性である私自身のよさを発見し、引き出したいと思っています。格好いい感じをめざした方が、しっくりくるのは当然。ふだん、私が着る服は白やネイビーばかりなので、差し色を加えるなら、イエローが合うのも必然でした。

「跳ね上げアイラインって何?」と思っていたのですが、ようするに、目尻を跳ね上げるようにアイラインを入れることなのですね。小さな鏡に写った私の目尻に、サッと鋭角にレモンイエローが乗せられた瞬間、目元がパッと明るくなりました。

おおっ!

私の顔には年相応のシワやシミがあります。消えなくなったクマもあり、眼窩は落ち窪んで見える。それが、レモンイエローをひと塗りしただけで、目に入らなくなりました。とくにコンシーラーやファンデーションを付けていたわけでもないのに、彩った箇所に目が惹かれるからでしょうか。

個人差はあるでしょうが、ハッキリした色をほどこすと、凛々しい感じになるようです。フェミニンではなく、活発な印象。男性だから寒色だろうと先入観を抱いていたのですが、予想もしないところに着地しました。

レモンイエローは、絶対に自分では思いつかなかった選択肢だと思います。臆さず、勇気を出して現場で試してみることの大切さを実感しました。それにしても、跳ね上げアイラインがあるということは、垂れ下げアイラインみたいなものもあるのかな……? そんなことも知らず、これまですっぴんで生きてきた自分が、ずいぶんと呑気だったように思えてくるのでした。

※写真中央から

<NEWS!>

この連載が漫画になりました! 併せてお楽しみください。

『僕はメイクしてみることにした』
STORY
前田一朗、38歳、独身。平凡なサラリーマン。ある日、自分の疲れ切った顔とたるんだ体を目の当たりにしてショックを受けた一朗は一念発起、メイクを始めてみることに! 薬局で出会ったコスメ大好き女子のタマちゃんを「師匠」と仰ぎ、失敗や迷いを繰り返しながら、自分を労わることの大切さやメイクの楽しさに目覚めていく。

『僕はメイクしてみることにした』

5月15日初回公開【マンガ新連載】第1話 僕がメイクを始めた理由

撮影・文/鎌塚亮

Edited by 大森 葉子

公開日:2021.05.20

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