齋藤薫の美容自身stage2

メーガン妃に学ぶ、“不平不満”の取り扱い方

2021.06.09

斎藤薫の美容自身stage2

人気連載「齋藤薫の美容自身 STAGE2」。今月のテーマは「メーガン妃に学ぶ、“不平不満”の取り扱い方」。毎月第2水曜日更新。

斎藤薫の美容自身stage2

人気連載「齋藤薫の美容自身 STAGE2」。今月のテーマは「メーガン妃に学ぶ、“不平不満”の取り扱い方」。毎月第2水曜日更新。

認められたくて、自分の存在を知らしめたくて、不平不満を言う人

不平不満は人を幸せにしない、不平不満が女をブスにする……もうみんな知っている。にもかかわらず、不平不満を口にする人は減らない。人間のサガ?ストレスの漏出?そうであっても不平不満自体は何も生まないのに、一体なぜ? 

改めてそう思ったのは、“あの人”の不平不満を耳にした時。こういう問題提起の時ほど、具体的な事例として“あの人”の名を挙げてしまうのは何だか申し訳ないけれど、でも次々と話題を提供してくれるのは本人だから、ここはやはり反面教師として学ばせていただきたい。そう、“あの人”とは他でもないメーガン妃。世界的に注目を浴びたロングインタビューで、英国王室の不平不満を高らかにぶち上げたのは、記憶に新しい。

先に断っておくが、もし本当にあの時語られたような人種差別が存在したのなら、それは由々しきこと。許されていいことではない。でもそのことと、世界中の視聴者に対して、“自分の嫁ぎ先”への不平不満を述べたこととは、やはりちょっと切り離して考えたいのだ。

第一子の妊娠中に、子どもの肌の色を心配されたという話はあまりに衝撃的だったが、これ以外にもインタビューでは小さな不平不満がたくさん述べられた。ランチに外出することも許されず、囚われの身のように感じたとか、過熱したメディアから誰も守ってくれなかったとか、黙らされたとか。驚くべきは、結婚式の3日前に大主教だけの立ち会いで「私たちだけの式を挙げた」のも、あの豪華な挙式は「私たちのためのものではないから。あれは世界に向けての式だから」って、何十億円も使って?とツッコみたくもなるが、仮にやらされた結婚式だとしても、それをネガティブに語るのは立場的にやってはいけないこと。

不平不満の多い人は一般論として「満たされていない」という不幸感や、「恵まれていない」という被害者意識が強いというが、正直こんな見事なシンデレラ人生はないし、それこそ囚われの身から逃れての何不自由ないカリフォルニア生活、今やとてつもなく恵まれている。なぜ語らなくてはならなかったのか? 

ましてや、不平不満が多い人には必然的にネガティブ思考の人が多いというが、もしこの人がそうだったら、そもそも英国王室に嫁いだりはしない。それがどんな大変なことかは自明の理。多少なりともネガティブ思考があったら、そこに自ら飛び込んでいくことなどしないはずなのだ。

で、考え得る理由は2つある。まず単純に、自分に甘く他人に厳しい人である疑い。もうひとつ、不平不満が多い人は、「認められたい人」という見方がある。自分がどれだけ苦悩し、どれだけ努力したかを不平不満にして吐露するパターンは、一般社会の愚痴にもよく見られるが、メーガン妃の場合は、「なぜ王室を離脱したのか?」の理由を正当化し、自分が正しかったのだというアピールとともに、離脱してきた自分の存在を改めて世間に認めさせたかった。自分がいかに特別かを世に知らしめる目的があったのだ。そのために誰かを悪者にしなければいけなかったわけだが、失敗はそこにある。

大声で言わない。聞こえぬようそっと言う、不平不満の極意

百歩譲って不平不満はあって当たり前。それをどう取り扱うかが問題なのだ。大声で言わないこと。みんなの前で言わないこと。個人攻撃はしないこと。そしてできれば、正義感を伴った不平不満であること。これらのルールに反すれば、ひたすら損をする。そもそも不平不満が叶うことは滅多にないのだから。

なのに“あの日”のメーガン妃は、大声でみんなの前で個人攻撃をした。しかも自らの発言を正義感からのものだと考えていたはずだ。つまり不平不満だとは思っていないのだ。一番怖いのは、それに気づいていないこと。自覚がないことである。不平不満が多い人ほど自覚がないのは、脳の中でネガティブな思考のスイッチが入ってしまっているから。人間うっかりすると思考の7〜8割がネガティブなものになってしまいがちなのに、それにも気づかなくなる。つまり不平不満もクセになりやすいのだ。私自身、会話の半分が不平不満になっているのに気づいて、ゾッとしたことがある。まずは自分の日常会話がそうなっていないか、気づくべき。まわりの人間をいかに疲れさせていたかということにも。まわりにもいるはずの、不平不満だらけの人。そういう人と時間を共にすると、激しい疲労に襲われる。だからこうも気づくべきなのだ。自分の不平不満に人を巻き込んではいけないと。

だからこそ、不平不満は大声で言わない、人に聞こえないようそっと言う……そう心がけているだけで、確実に減ってくる。後ろめたいものだと思うベクトルが働いてくるから。もっと効果的なのは、口に出さずに紙に書くこと。個人への不平不満はとりあえずメールに記して送信しないこと。それだけで胸のつかえがとれるから。なるほど、人に聞かせないのがルールなのだとわかってくるから。

おそらく王室では、国民に決して不平不満を聞かせないことをモットーとしていたはずだ。突き詰めて言えば、国民の税金で生きているから。故に曲がりなりにもロイヤルファミリーの一員が、不平不満を公言してはいけなかったのだ。どんな内容であっても。そういうタブーを冒したのに、それを勇気として讃えてしまうような声もあったから、そこに反省はない。それどころか、メーガン妃は今「王室に対して許す準備はできている」と言っているとか。それが本当ならばやっぱり、不平不満は言えば言うほど人間をいけない高みに上げてしまうということ。だから早くやめるべきなのである。

で、不平不満をやめるもっとも簡潔な方法が、自分の居場所を変えること。「不平不満は、進歩の第一段階だ」という言葉があるが、これは“生きていく環境や生き方を改善する最初の一歩が、今に不平不満を持つこと”という意味。だからすかさずそこから立ち去り、環境を変え、前に進むこと。ずっと同じ場所で、いつも同じ不平不満を唱えることほどバカバカしいことはないわけで、自分をネガティブにする場所から離れ、嫌いな相手から離れ、次に進めばいいのだ。自分を不機嫌にしない生き方をすれば。だから不思議なのは、メーガン妃も不満だらけの場所から早々と脱出したのに、1年も経って不満を口にしたこと。前に進んだのに、なぜわざわざ?だからやっぱり自分を認めさせたい一心だったのだということになる。でもそのためにせっかく笑顔の美しい人が、眉間にシワの寄った“不平不満顔”を世界に露呈したのは残念な話。

つまり負の環境から脱出してもしても同じことを繰り返す人もいるわけで、激しく転職を繰り返す人はそういうループにはまった人。根本的な解決にはなっていないからで、そういう人はまず自分がなぜ不満を口にするのか、その原因を突き止めたい。満たされていないから?認めてもらいたいから?はたまた、わがままなだけ?何でも悪く捉えるマイナス思考に脳が傾いているから?そのどれかに当てはまるはずだから。その根本原因から正していくべきなのだ。

さらに、無理矢理にでも思考を180度ひっくり返すこと。なぜ自分ばかりが忙しいの?と腹を立てるところ、逆に、自分はこんなに人から必要とされているんだと誇りに思うような。そして、いかなる苦悩も、これは勉強させられているのだと思えるようなこと。心の底からそう思えるようになるには、時間はかかる。でもそういう考え方があることだけは知るべきなのだ。何でもポジティブに考える脳の練習、幸せの絶対の近道として始めてほしい。

もしも、あの日のメーガン妃が、多少ともポジティブな脳の使い方をしていたら、不平不満の代わりに、自分にも非があったかもしれないとか、自分も多くを学んだとか、一言でも言えていたら、それこそ世界中がこの人の話に心を動かしたかもしれない。ファンも増えていたかもしれない。被害者になりきったからこそ、皮肉にも同情を得られなかった。不機嫌になったら負け。それが不平不満の哀しい力学なのである。

撮影/戸田嘉昭 スタイリング/細田宏美 デザイン/堀康太郎(horitz) 構成/寺田奈巳

Edited by 中田 優子

Brand News

VOCEタイアップ

Serial Stories

連載・シリーズ