VOCE’s BOOK 話題の著者に訊く

【塩谷舞さん】NYへの移住で言葉がシャットアウト。「バズライター」に起きた変化

2021.07.22

塩谷 舞さん

Twitterフォロワー10万人超え、ニューヨークに渡り文筆家となった塩谷舞さんに聞いた「幸せの求め方」

塩谷 舞さん

Twitterフォロワー10万人超え、ニューヨークに渡り文筆家となった塩谷舞さんに聞いた「幸せの求め方」

塩谷 舞さん/Mai Shiotani
塩谷 舞さん/Mai Shiotani

大阪府出身。ニューヨーク、ニュージャージーを拠点に執筆活動を行う。学生時代にアートマガジン「SHAKE ART!」を創刊。2017年、オピニオンメディアmilieuを立ち上げ、執筆活動を本格化。

【今回のテーマ】自分の求める幸せがわかりません

起きてすぐSNSで友だちの近況をチェックする日々。もはやどこまでが友だちで、何が幸せなの? 見失う前に!

武装解除して自分の素を見つめて

「バズライター」「インフルエンサー」としてブレイクした後、ニューヨークに渡り、「現在、PRの仕事は基本的にお断りしている」という文筆家の塩谷 舞さん。「社会のピラミッドの中で勝ち進んでいくよりも、心からリラックスして、自分本来の姿でいられることがいちばんの贅沢だと感じるようになりました。

20代のころは、求められたら全力で応えたいと思って、身体を壊しながもPRや広告の仕事に取り組んでいました。当時は人の役に立って初めて、生きる権利が与えられるような感覚だったんです。自己肯定感が低くて、それを埋めるように働いていたんですよね。そうしてバズる記事を量産していると、インフルエンサーと呼ばれるようになり、周りには私を『人間』というより『効果の高い広告枠』として接してくる人が多くなりました。

自分自身も、『私はお金を動かせる人材』という意識になってしまって。それは、自己肯定感ならぬ自己有用感。次第に『私には価値があるんだから、無駄な時間は過ごしたくない』と、どんどん性格が悪くなっていったんです」と振り返ります。

そんな塩谷さんにとって変化のきっかけとなったのは、ニューヨークへの移住。塩谷さんの武器でもある言葉がシャットアウトされてから。

「日常英会話もままならない状態で渡米したので、最初は当然、散々な日々でした。でも、言語表現だけでは不十分な日々の中で、ものを見る目に大きな変化が起きたんです。刺激が強すぎる環境下で、日本の職人さんが作る繊細な工芸品に惹かれたり、自分の容姿への捉え方も変わったり……。それまでは、一重まぶたが嫌でアイプチをしたり、極太アイラインを引いたりと、短所だから隠さなきゃ、と考えていました。けれどもよく見ると、東アジア人らしい自分の素朴な顔は落ち着くなと。そこから、自分のDNAに似合う化粧や服装、手になじむ質感の器探しに夢中になりました。そうして見つけた美しい道具や、心を打つ景色をインスタに投稿していたら、その美意識に共鳴した友人たちとの出会いも。一度はSNSで心をやられた私ですが、今はそこから広がるかけがえのない出会いに魅了されています」

ここじゃない世界に行きたかった

『ここじゃない世界に行きたかった』
塩谷 舞著 ¥1760/文藝春秋

Twitterのフォロワー数10万人超。バズライターとして広告業界で活躍してきた著者が、人間らしさを取り戻すために綴ったみずみずしいエッセイ集。美しい写真にも心癒やされる。

構成/藤本容子

Edited by 大森 葉子

Serial Stories

連載・シリーズ