連載 メンズメイク入門

「メンズメイク=男らしくない」と決めつけるには無理がある理由

公開日:2021.06.25

「メンズメイク=男らしくない」と決めつけるには無理がある理由

メンズメイクと向き合い、時に揺れ戻されながらも、確実に一歩一歩前進する筆者。試行錯誤する最中にかけられる周囲の反応の声から、「男らしさとは?」という問いにぶつかります。

「メンズメイク=男らしくない」と決めつけるには無理がある理由

メンズメイクと向き合い、時に揺れ戻されながらも、確実に一歩一歩前進する筆者。試行錯誤する最中にかけられる周囲の反応の声から、「男らしさとは?」という問いにぶつかります。

【執筆したのは……】

鎌塚亮
1984年生まれ。会社員。セルフケアをテーマに文章を執筆。メンズメイク初心者。
Twitter: @ryokmtk
note: 週末セルフケア入門

メンズメイクに対する周囲からのさまざまな反応

今回は、メンズメイクに対する周囲の反応の話をします。私はメイクをすることも、文章を書いていることも隠していないので、知人のほとんどはそれを知っています。Webで文章を読んでくれた人の反応も含めて、ほとんどが肯定的なものでした。

私と同じように、これまでメイクしてこなかった人たちの反応は「教えて」「ふーん、俺には関係ないけど」「これがいいよ」に大別されました。

とくに、同世代の男性たちはスキンケアに興味津々です。ちょうど老化がはじまる年齢だからです。おもしろいことに、彼らはこっそり連絡してきます。ある日、メッセージが届いたかと思うと「おすすめのスキンケアを教えてほしくて……」と相談が始まる。みんな、肌荒れに悩んでいたり、シミを気にしていたりします。「そのままでいいじゃん」と思うこともありますが、それを決めるのは彼ら自身。

同世代より上の男性たちは、もう少し保守的です。「“お化粧”をしているんだって?」「なんだか変なことをはじめたらしいね」といった反応。自分には関係ないと思っているのでしょうが、中には「フェイスマッサージがいいんだよ、全然変わるよ」と教えてくれるような伊達な先達もいます。

一方、普段メイクをする人たちの反応は激しく肯定的なもの。「これがいいよ」「これあげるよ」「教えてあげるよ」など。みんな、おすすめのコスメやメイクの方法について教えてくれます。全員が私よりもくわしい。同世代の女性ともなれば、文字通り大人と子供くらいの差があります。

いらなくなったコスメをくれる人が多いことにも驚かされました。くれた人には、使ってみた感想を伝えます。すると、「似合うと思ったんだよ」「こっちはどう?」といったフィードバックがもらえ、上達のサイクルが回りはじめます。みんなこうやって成長してきたのでしょうか。

私の文章を、パートナーや家族に読ませると言ってくれた人も多かったです。「スキンケアをやれっていってもやらないんだよね」「ずっと同じ洗顔料を使っているみたい」「自分の顔を全然気にしないんだよ」などの声が寄せられました。

メンズメイクに反対する人の共通点は「不安」な気持ち

このようにほとんどが「いいね」「わかる」でしたが、一部には反対や中傷もありました。

反対意見は、まとめると「男らしくないからダメ」というものでした。驚いたのは「不細工がメイクしても無駄」と言ってくる人がいたことです。じつは、女性に比べて男性は他人から容姿についてハッキリ言及されることがそう多くありません。ここには性別による非対称性がありますが、メイクをすることで、そんな特権が剥奪されたようです。

つまり「メイクをするやつは男ではない」ということでしょう。しかし、だとすれば、「たかが」メイクをするくらいで揺らいでしまう「男たるもの」とは一体何なのでしょうか?

カラーメイクをした男性を見ると「困惑」を示す人はいます。どうやら不安になるようです。おそらく、相手が何者なのか分からなくなってしまうのでしょう。

また逆に、普段しっかりメイクをしている女性は、ノーメイクで人に会うと困惑されることがあるそうです。目鼻立ちが変わったわけではないのに「誰だか分からなかった」と言われてしまう。

「らしくない」格好をされると、そもそも誰だか分からなくなる。このことは、じつは、ひとがひとの顔をよく見ていないことを示しています。ひとはひとを認識するとき、かなりの部分を見た目の「らしさ」で当たりをつけているのだと思います。それは、人の顔をまじまじと見ることが、ひどく難しいからでしょう。

だから「らしくない」格好をする人に対して、「お前はなんなんだよ」と、不安や不快感をもつのかもしれません。そのままだと嫌な気分なので、相手に適当な名前をつけて視界から追い出す。それは理屈ではないようです。

しかし、「男たるもの」にこだわる人が、他人にも保守的な男らしさを要求する行動は、男らしさがある程度幻想であることを示しています。なぜなら、男らしさがすべて自然で確固たる普遍的な性質であるのなら、他人が男らしくない振る舞いをしようがしまいが関係ないからです。

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