1. 「卵子凍結保存」の実情とは?【高齢出産、不妊治療を考える】

2017.05.28

「卵子凍結保存」の実情とは?【高齢出産、不妊治療を考える】

「子どもは欲しいけど、今は仕事が優先……」そんな女性の選択肢を広げてくれた「卵子凍結」の実情について、TVディレクター/ライターの藤村美里さんに教えていただきました。

「卵子凍結保存」の実情とは?【高齢出産、不妊治療を考える】

「未婚女性の卵子凍結保存」に関連するニュース報道の増加を受け、昨年から数回にわたり、最新の卵子凍結の状況や浦安市の取り組みを中心に記事にしてきました。東洋経済オンラインではその後、卵子凍結に関する女性たちの思いや実態をより広く知るため、アンケート調査を実施。20歳から45歳までの女性385人から回答があり、その中には切実な現状を訴える声も多くありました。

今、実際に卵子凍結保存という選択を考えている女性はどれくらいいるのか。何を思い、何に悩んでいるのか。この記事ではその現状をご紹介しつつ、そこから見えてくる卵子凍結の現状と課題などについて考えていきます。

「未受精卵子の凍結保存」知っている女性は約92%

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ここ数年、未婚女性が卵子を凍結するということについて、女性たちの間で話題に上ることが増えたと感じてきた。しかし、それは筆者の周辺だけなのか、それとももっと広い範囲のことなのか。“将来の自分のために卵子を凍結保存する”という選択肢は、同世代の女性にどのくらい認識されているだろうか。

今回行ったアンケートから浮かび上がってきたのは、未受精卵子の凍結保存について、筆者の想像を超える認知度の高さだった。

具体的には、アンケートの「いつか自分で使うために、自身の未受精卵子を凍結しておく人がいることを知っていましたか?」という質問に対し、約92%もの人が「知っている」と回答。何を通して知ったのか?という設問には、メディアやSNSという回答が目立ったが、友人や知人という回答も少なくなかった。そこからは、女性たちが比較的日頃から、卵子凍結について高い関心を持ち、ときに身近で話題にしているということが想像される

筆者はこのテーマを継続的に取材してきたが、未婚女性の卵子凍結というのは、以前はここまでメジャーな話ではなかった。たとえば米国のエージェント経由で未受精卵子を凍結した人の話がメディアで報道されても、身近な話題としては受け取られなかったように感じる。それは限られた人の話であって、自分には関係ない、と。そして、仮に自分が実施したとしても、女子会など身近で話題にできるほど、気軽に話せる雰囲気ではなかったのではないだろうか。

もちろん、現在も日本国内のすべての産婦人科や不妊治療施設で簡単に実施できるわけではなく、“受精卵の凍結しかできません”と回答する医療施設も少なくない。誰もが軽い気持ちで卵子凍結ができるほどの環境は整っていない。

しかし、「実は自分の卵子を凍結保存しています」という経験者の声を聞く機会は確実に増えた。2014年に日本生殖医学会が卵子凍結について容認する見解を出したこと、そして、2015年に浦安市が卵子凍結について助成を開始すると発表したことなども後押ししているのだろう。

若い女性たちの中に「将来の自分のために」と自分の体を考えながら働く人が増えてきていると感じる。

高齢不妊治療の現実が若い世代に伝わった

不妊治療クリニックを経て、がん患者をはじめとする卵子凍結保存に10年以上携わっている香川則子氏は、若い世代に現実が伝わってきた理由として、高齢の不妊治療患者たちが増えたことを挙げている。

21人に1人が体外受精児というほど、不妊治療は日本で一般化しています。そうした中、晩婚になることや体外受精治療をする可能性があることを前提に、もし将来出産することを望むなら、少しでも若い時に卵子凍結をして備えたほうが得策である、そう助言をする人が増えたのだと思います。

職場の40代の先輩が“仕事ばかりしている”後輩女性に伝えることで、“治療者の約1割しか出産に至らない事実”が、20代女性にも近い将来の自分ごととして想像できるようになってきたのかもしれません」

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高齢不妊治療経験者からの声