1. それでも産みたい……「卵子凍結」する人の本音

2017.06.06

それでも産みたい……「卵子凍結」する人の本音

「子どもは欲しいけど、今は仕事が優先……」そんな女性の選択肢を広げてくれた「卵子凍結」をする人の本音について、TVディレクター/ライターの藤村美里さんに教えていただきました。

それでも産みたい……「卵子凍結」する人の本音

これまで数回にわたり、記事にしてきた、女性たちの間で広がる「卵子凍結保存」の現状。前回の記事では、東洋経済オンラインが実施したアンケート調査に回答した385人の女性のうち、卵子凍結保存をしたい20歳から34歳以下の人は約57%だったという結果をお伝えした。

ただ、いざ実施する際に不安な点が「ない」と回答した人はごくわずかで、凍結保存しておきたいという人も、絶対にしたくないという人も、関心のある点は似ていた。

そこで、浦安市の卵子凍結プロジェクトの責任者を務める順天堂大学医学部附属浦安病院の菊地盤先生と、今年実際に卵子凍結保存をした30代の女性に、女性たちが不安を感じる点について質問してみた。

卵子凍結、本当に大丈夫?多くの女性が挙げた5つの疑問

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Q1 長期間にわたり、卵子を凍結することによって、障害がある子どもの可能性が増えるということはないのでしょうか? 何年くらいならば凍結しても大丈夫という年数などの目安はありますか?

凍結期間による問題はないと考えてよいと思われます。凍結期間による劣化はありませんので、保存年数の制限はありません。ただし、妊娠する年齢が高くなれば、高齢妊娠のリスクは上昇しますので、いつまででも妊娠を先延ばしすることは推奨できません

また、凍結保存容器内で、他の検体からの感染のリスクが一部で危惧されているようですが、現在までそれについての明らかなエビデンスはありません。

Q2 30歳の凍結卵子と40歳の凍結していない卵子、どちらのほうが生存率(出産率)が高いのでしょうか? 障害がある子の割合はどうでしょうか?

生存率、障害の出現率は、ともに卵子の年齢に大きな影響を受けます。ですから採卵時点での年齢が上昇すれば妊娠率は低下し、流産する可能性は増えていきます。そして、生産率(生まれてくる確率)は年齢に伴って低下していくことになります。また、染色体異常のリスクも、年齢により上昇します。以上のことから、30歳の凍結卵子のほうが、40歳での新鮮卵子よりも成績は良くなります。

Q3 若いときに採卵をすることで、妊娠しにくい体になる可能性はないのでしょうか? 採卵の際、間違ってどこかを傷つけてしまうことはないのですか?

どの年齢で行っても、採卵のリスクは同様と思われます。採卵時、多臓器の損傷、出血、感染のリスクはありますが、1%未満といわれています。実際、内膜症や筋腫などを合併した方の採卵は感染などのリスクが上昇しますが、内膜症、筋腫ともに、年齢とともに罹患率も上昇しますので、やはり若年での採卵が良い可能性はあります。

Q4 排卵誘発剤は錠剤ですか? 自己注射ですか? 個人差はあると思いますが、どんな副作用があるのでしょうか?

さまざまな剤型の薬を使用します。内服薬、点鼻薬、注射薬などがありますが、注射薬も近年は自己注射可能なものも増えていますので、通院の負担は以前より減少していると思われます。

副作用の最たるものは、卵巣過剰刺激症候群です。卵を多くとるためには、卵巣を刺激しなければなりませんが、その結果、卵巣は腫大します。刺激が強すぎた場合、女性ホルモン値が過剰となり、腹水や、胸水まで溜まってしまうリスクがあります。よって、誘発剤の刺激を最適に行うことが重要となりますので、誘発中は採血や、超音波などのモニタリングが必須です。

それでも、卵巣過剰刺激症候群を発症してしまった場合には、採卵後に入院処置が必要となる場合もあります。

Q5 卵子だけが若くても、身体が高齢(45歳以上)の場合、妊娠できないのではないか不安です。着床率は年齢とともに下がりますが、若い凍結卵子の方が、着床率は良いのでしょうか?

海外で、ご高齢(50歳前後)の方が、若い方の卵子の提供によって妊娠する事例が報告されているのはご存じだと思います。国によって背景は異なりますが、基本的に海外での体外受精においては卵子提供が一般的になっており、30代後半過ぎてからの治療では卵子提供の選択肢も説明されます。

日本においては卵子提供の法整備がなされていないため、基本的に選択肢とはなりえず、結果として海外の体外受精に比べて成績が悪いことになります。

このように、高齢でも若い卵子を用いれば妊娠は十分可能ですが、高齢妊娠のリスクを避けるためには、やはりなるべく若いうちでの妊娠が理想です。日本生殖医学会のガイドラインでは、凍結卵子による妊娠においては、45歳までに行うように、とされています。

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