メンズメイク入門

キレイになりたいけれど、見た目磨きは恥ずかしい!? 男性美容のジレンマ

2021.07.19

キレイになりたいけれど、見た目磨きは恥ずかしい!? 男性美容のジレンマ

メンズメイクに初挑戦し、慣れ始めてきた筆者は「女性が苦しんでいるルッキズムの世界に、男性もひきずりこまれるのではないか?」と投げかけられたことがあったそう。ありのままでは愛されないのに、手をかけることが恥ずかしい。男性美容のジレンマを考えていきます。

キレイになりたいけれど、見た目磨きは恥ずかしい!? 男性美容のジレンマ

メンズメイクに初挑戦し、慣れ始めてきた筆者は「女性が苦しんでいるルッキズムの世界に、男性もひきずりこまれるのではないか?」と投げかけられたことがあったそう。ありのままでは愛されないのに、手をかけることが恥ずかしい。男性美容のジレンマを考えていきます。

【執筆したのは……】

鎌塚亮
1984年生まれ。会社員。セルフケアをテーマに文章を執筆。メンズメイク初心者。
Twitter: @ryokmtk
note: 週末セルフケア入門

「毛穴」は最近発明された、新しい美容の概念!?

「毛穴」について面白い話を聞きました。かつて、鼻の毛穴に詰まった角栓をきれいにするパックが流行したことがあるのですが、人が「毛穴」を気にし始めたのはその流行があってからで、それまではこれほどまでに気にされたことがなかったというのです。つまり「毛穴」は最近発明された、新しい美容の概念だった。

私もコンビニエンスストアで買えるパックを使ったことがあります。使うと、毛穴に詰まっていた角栓が取れて気持ちよかった。爆発的に流行しましたが、やりすぎて毛穴まわりの皮膚を傷めた人もいました。どうしてあの頃の私たちは、鼻の黒ずみを取ることにあんなにも夢中になれたのでしょうか……。

いまでは「毛穴」といえば、スキンケアの対象であり、メイクで隠されるものの代表格。下地でもファンデーションでも、毛穴を自然に隠せることを売りにしたアイテムがたくさんあります。鼻だけでなく、頬の毛穴まで引き締めなくてはならないような雰囲気。なんだか、対象が広がっていませんか? もしかして、全身の毛穴をケアしている人も少なくないのでしょうか。

「毛穴」という概念が生まれたことで、全身の毛穴が美容の対象になった。「毛穴が見えない方がキレイ」という認識をみんなで共有することによって、そういうことになってしまった。それまでは誰も気にしたことなんてなかったのに、もう引き返せない! これは、毛穴が「美容化」されたといってもいいと思います。

美容に関する情報を見ていると、美容化が日々行われていることに気が付きます。作られた概念は「毛穴」だけではありません。たとえば「ツヤ」と「テカリ」。どちらも皮脂についての言葉だと思うのですが、まんべんなく油分がいきわたっている肌は「ツヤ」、まだらに脂ぎっている肌は「テカリ」とされています。「ツヤ」の概念が生まれるまで、皮脂は一律に良くないものとされていました。のちに「自然なツヤがあったほうがいい」という考えが生まれ、細かく区別されるようになったのです。

美容の本質は、「コンセプト」

このように、私は美容の本質は「概念」ではないかと思うのです。英語で言えば「コンセプト」。化粧品の成分や、メイクの技術の巧拙以上に、コンセプトが決め手になっている。これが、美容産業の特徴です。

メイクができるようになることは、「メイクの技術を身に着ける」ことだと思っていました。しかし、みんなが器用なわけではありませんし、メイクに手間をかけられる人も限られるはず。

肝になるのは、コンセプトの理解だったのではないか。メイクを知って時間が経ってから、徐々にこれが呑み込めてきました。「毛穴」の存在に気づいてはじめて、「毛穴ケア」ができるようになる。「しみ」を発見することによって、「UVケア」をしようと思い立つ。その都度、私は新しい概念を覚えているのです。

たとえば、私はホホバオイルの使い方がさっぱり分かりませんでした。さらさらとしたオイルで、何となくいい感じであることは理解できるのですが、「お肌のケアに使ってください」と言われても、何のケアにどう使えばいいのか分からない。ずっと、洗面所の棚のなかで眠っていました。

それが最近、髭剃り前にホホバオイルでマッサージすると、大変快適に剃れることを発見しました。それを試みたのは「プレシェーブオイル」なるコンセプトを知ったことがきっかけ。髭を剃る際に避けがたい「摩擦」と「乾燥」を緩和するために、オイルで滑りをよくするという発想……なるほど!

美容誌や日々発売される化粧品は、このようなコンセプトを大量に生産しています。私はそれをインストールすることで、自分の顔に対する選択肢を増やすことができました。

しかし、何事もやりすぎは禁物。美容のコンセプトをインストールしすぎると、内臓や骨格、細胞に至るまで、はてしなく美容化されていきます。「あまり美容が高度になりすぎると、『だれもが美しくならなければならない』というプレッシャーが増すのではないか」という批判もあります。

Serial Stories

連載・シリーズ