1. 【約4000万曲聴き放題】アマゾンのAIスピーカーが最強といえるワケ

2017.11.12

【約4000万曲聴き放題】アマゾンのAIスピーカーが最強といえるワケ

日本ではまだ浸透していないものの、今後普及が予想される“AIスピーカー”。今回は、その機能ではなく、他社と比較したアマゾンのサービスについて、ITジャーナリストの本田雅一さんに解説していただきました。

【約4000万曲聴き放題】アマゾンのAIスピーカーが最強といえるワケ
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アマゾンは11月8日、AIスピーカー「Amazon Echo」を来週から日本で販売開始すると発表した。小型版の「Amazon Echo Dot」、スマートホームのハブ機能を持つ「Amazon Echo Plus」を加えた3モデルのラインナップとなる。

価格は主力モデルとなるEchoが、他社製品よりも約2000円安い1万1980円に設定されているほか、最廉価のEcho Dotは5980円と安く、購入しやすい。

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アマゾンは11月8日、AIスピーカー「Amazon Echo」を3モデル発表した(筆者撮影)

都内で開催された発表会には多くの報道陣が駆けつけ、会場はすし詰め状態になった。メディア側の期待の大きさが伝わる発表会だったが、アマゾンが説明するように日本語と日本の文化、ライフスタイルを理解したアシスタントとしてどこまで上手に機能するかは、来週の発売以降を待たねば本当のところはわからない。

ハードウエア、およびアマゾンのAIアシスタントに対応するパートナー企業製のスピーカーはいずれもすでに海外では発表・販売されているもの。そうした意味では、注目点は日本語への対応や、日本でよく使われているアプリケーション、サービスなどとの連携にフォーカスが移る。今後のお手並み拝見……といったところだが、筆者は別の視点から発表会に注目していた。

それはライバルと比較した、アマゾンの立ち位置の特殊性だ。

販売実績ではアマゾンがグーグルを凌駕

米国では、アマゾンが2014年末に「Amazon Echo」を発売し、その後、2016年末にグーグルも「Google Home」を発売。AIスピーカーは2016年ホリデーシーズン一番のヒット商品となった。価格もさることながら、アシスタンスサービスの進化や他社アプリ、サービスとの連動が進んだことも理由のひとつだろう。

比較されることが多い両社の製品だが、販売実績では1000万台を超えたと言われるAmazon Echoが圧倒している。一方で今年はソニーがGoogleアシスタントに対応するスピーカー製品を発売するなど、プラットフォーム全体ではグーグルのシェアが増加していきそうだ。1年遅れで追いかける日本市場ではどのような動きになるだろうか。

日本ではLINEが10月5日に「Clova WAVE」、グーグルが10月6日に「Google Home」を発表。対応サービスも発表済みだ。各社とも連携できるサービスの幅を徐々に広げている。アマゾンもEchoを発表する前からサービスを連携する各社の名前を挙げてきた。

それぞれの立ち位置の違いから立ち上げ方は異なるが、俯瞰してみると全体のフレームワークに大きな違いはない。他社アプリ・サービスと連携をする仕組みの提供と、他社オーディオ製品向けのライセンスだ。AIアシスタントのプラットフォームを強化するため、他社サービスと接続して利便性や適応範囲を拡げ、さまざまなオーディオ製品にも自社AIアシスタントサービスへの窓口を作ることで、まずは利用者数を拡大していく。

当然ながら、立ち上げ時には“どのサービスはどっちに対応”といった勢力図が出来上がっていくが、それはおそらく黎明期の現象に過ぎない。米国で市場が急拡大しはじめた1年近く前なら話は別だが、今後は“一定以上の存在感を持つAIアシスタントには対応する”のが当たり前になっていくだろう。

たとえばポケモンは11月1日にAIスピーカーと連動するサービス「ピカチュウトーク」を発表したが、アマゾンのアシスタンスサービスであるAlexaとグーグルのGoogleアシスタントの両プラットフォームに対応する。

アプリケーションやサービスを提供している側の視点で言えば、中期的には特定のパートナーを決めずに主要なAIアシスタントには対応していくほうが理にかなっている。対応サービスやアプリケーションの獲得合戦は、そう長くは続かないのではないだろうか。

カギを握るのは「Amazonプライム」

そうした中で筆者が注目しているのが、「Amazonプライム」が日本市場におけるAIスピーカーの勢力争いにどう関わっていくかだ。Amazonプライムは米国市場で加入率が高く、この夏には加入者が8500万人に達したと発表している。Amazon.com利用者の3分の2が加入している計算だ。

一方、日本での加入者数は未発表だが、週刊東洋経済が5月にNTTコム リサーチと共同で行った調査によると、Amazonプライム加入率は利用者全体の16.6%。推定契約者数は200万~300万人ぐらいで、日米の人口差を考慮に入れたとしても控え目な数字だ。

しかしながら、アマゾンでの買い物が多い得意客がAmazonプライム会員であることを考えれば、Amazon Echoのような黎明期にある商品ジャンル立ち上げには大きな武器になるのではないだろうか。

AIスピーカーは自然言語を用いた会話型のユーザーインターフェースで、日々の生活をサポートしてくれる。その基本部分については、多少の違いはあるものの、各社サービスで決定的な違いはない。将来的には連携サービス、連携アプリも近付いていくだろう。

だが、一方でAIスピーカーは体験型商品でもある。AIスピーカーとはどんなものだろうか。そう考えて購入するアーリーアダプターにとって魅力的なのが、Amazonプライム会員に用意されている特典サービスだ。中でも重要なのがプライムミュージックだろう。

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約4000万曲が聴き放題の「Amazon Music Unlimited」も発表された(筆者撮影)

約4000万曲をライブラリとして用意した聴き放題のAmazon Music Unlimited(月額980円、プライム会員は月額780円)をAmazon Echoと同時に発表したことからもわかるとおり、音楽配信サービスはAIスピーカーを普及させるために極めて重要なサービスだ。グーグルならGoogle Play Music、LINEならLINE MUSICだが、それぞれ無料期間があるとはいうものの、何らかのサービスを契約せねばならない。

これに対してプライムミュージックは約100万曲とはいえ、プライム会員なら新たな契約なしにいつでも楽しめる。ライブラリ数は大きく異なるものの、アマゾン側で用意したプレイリストをBGMとして流すなどの使い方ならば十分に使える。そのうえで、Amazon Music UnlimitedはEchoユーザーに月額380円で提供される(Echoユーザーでも、Echo以外のデバイスで利用する場合には通常の契約が必要)。

こうした“おはじめ”の際の手軽さは、AIスピーカーというカジュアルなオーディオ製品にとって大きなアドバンテージだ。製品価格、各種サービスの価格と積み上げたとき、とりわけプライム会員にとって割安に見えるよう価格が設定されていることも、アマゾン得意客にとっては魅力的に見えるだろう。

アマゾンのほうが「消費者」により近い

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「Echo」(1万1980円)のほか、小型版の「Echo Dot」(5980円)、上位モデルの「Echo Plus」(1万7980円)が発表された(筆者撮影)

またグーグルとアマゾンの2社を離れた位置から俯瞰してみたときに、アマゾンのほうがAIスピーカーと周辺アプリケーション、サービスを提供する際の目的、目線が消費者により近いという特徴がある。アマゾンは消費者とじかに接しながら、商品、コンテンツを長年販売してきた企業だけに、消費者体験、消費者価値を高める意識の強さを感じる。それはAndroidを開発するグーグルと、iOS(+iPhone)を開発するアップルの違いにも似ている。

さらに先を見据えるならば、日常的な行動に対してAIアシスタントを通じてユーザーを助ける。そんな機能の実装、消費行動に近いアマゾンのほうが、消費者向けのAIアシスタントサービスで情報を集めやすいのではないか。

AIプラットフォームと消費者の接点という視点では、Androidを持つグーグルのほうが有利との見方もあるだろうが、アマゾンは実際に商品・サービス・コンテンツを販売する世界最大のストアを持っている。実際には商品を購入する際の行動パターンだけでなく、“ある商品を購入せず、別の商品を買った”など、購入に至らなかった行動履歴まで持っている。

Amazonプライムと消費者との距離の近さ。これこそがアマゾン、そしてアマゾンが仕掛けるサービスの強さといえる。


【著者プロフィール】
本田 雅一(ほんだ まさかず)

IT、モバイル、オーディオ&ビジュアル、コンテンツビジネス、モバイル、ネットワークサービス、インターネットカルチャー。テクノロジーとインターネットで結ばれたデジタルライフスタイル、および関連する技術や企業、市場動向について、知識欲の湧く分野全般をカバーするコラムニスト。

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