1. 【コラーゲンは飲んでも無駄!?】アンチエイジングにつながる美肌づくりの大原則

2018.02.03

【コラーゲンは飲んでも無駄!?】アンチエイジングにつながる美肌づくりの大原則

シワ、たるみなどの予防にコラーゲン製品が流星のごとく発売されては消えていく。人体は小宇宙、複雑な分子結合を経ずして1000個以上のアミノ酸からなるコラーゲンは生成されない。まして食品やサプリメントに含まれるコラーゲンがそのまま肌に届くとは考えにくい。細胞タンパク質、コラーゲンの老化の本質を知り、正しい美肌づくりに役立てよう。

【コラーゲンは飲んでも無駄!?】アンチエイジングにつながる美肌づくりの大原則

体内のタンパク質は7万種類!

私たちの体は60~70%が水分、残りの約20%がタンパク質、その残りが脂肪や他の成分で、タンパク質は皮膚、血液、筋肉、臓器、骨などをつくる。体内にあるタンパク質は、実に7万種類と推測される。

タンパク質は20種類のアミノ酸が枝分かれすることなく一列につながって結合している。我々は、肉や魚などの食品に含まれるタンパク質をアミノ酸にまで分解し、一度アミノ酸の状態で体内に蓄え、必要に応じて再びアミノ酸をつなぎ合わせてタンパク質をつくる。

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1個の細胞が80億個のタンパク質を分解・生成

「私たちの体は約60兆個の細胞でできており、それぞれの細胞は約80億個のタンパク質を持っています。1個の細胞が生きていくために必要な80億個のタンパク質は常に分解と生成を繰り返して、新陳代謝を行っています。そのスピードはもっともアクティブな細胞で1秒間に数万個と言われるように、60兆の細胞の中では毎秒恐るべき勢いでタンパク質がつくり続けられているのです」と説明するのは京都産業大学教授の永田和宏先生。

体のタンパク質の3分の1がコラーゲン

体内のタンパク質の約3分の1がコラーゲン。美容上でもコラーゲンは重要な役割を担っている。皮膚の細胞をつなぎ合わせて、弾力やハリを保っているのがコラーゲンだ。細胞はコラーゲンを主成分とする結合組織がなければ、その場所に留まることができない。皮膚を生み出す細胞を皮下に留めてくれるのもコラーゲンのおかげだ。だから美容業界や食品業界は、こぞってコラーゲン関連の商品開発を進めている。

食べたら分解されるコラーゲン

しかし「我々がとったタンパク質は、すべて一度アミノ酸レベルまで分解され、もう一度タンパク質に合成されるので、コラーゲンを食べても、そのままコラーゲンそのものとして皮膚や骨に定着するとは考えにくい。むしろコラーゲンをつくる材料を豊富にとった程度の影響でしょう」と永田先生。ヒトのコラーゲンには1型から27型まで存在し、それぞれ骨、皮膚、血管などの土台をつくる。たとえコラーゲンの原料をたくさん食べたとしても、それがすべて美肌づくりに役立つとは限らない。

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コラーゲンも代謝を繰り返す

タンパク質が数秒から数ヵ月の寿命で代謝しているように、コラーゲンも代謝を繰り返す。遺伝情報にしたがって、一本のひも状に結合されたアミノ酸は、タンパク質となって、らせん状になったり、折りたたまれて、必要な部分で働く。

ここで注目したいのは、誰がタンパク質を折りたたみ、必要な場所に導くかということ。実はこれを行っているのが、“分子シャペロン”という介添人のような物質。また、軽い熱ショックや、微量の有毒物質や酸化ストレス、短時間の低酸素や虚血状態で発生するストレスタンパク質も、分子シャペロンのように、タンパク質を成熟させることが明らかになっている。

「分子シャペロンは合成された線状のタンパク質を、正確な立体構造に折りたたむように導いたり、熱ストレス(発熱)や酸化ストレスなどで立体構造の崩れたタンパク質をもとに戻そうとする働きもします。特に私が発見したHSP47は、コラーゲンだけに特異的に働き、コラーゲンのらせん構造をつくるのに欠かせない分子シャペロンで、これをノックアウト(遺伝子破壊)したマウスは、正しい三重らせんのコラーゲンがつくれずに、受精後10日あまりで胎児のまま死にます。分子シャペロンはコラーゲンをはじめとするタンパク質の立体構造をつくる上で欠かせない物質なのです」と永田先生。

コラーゲンの品質管理が老化予防のカギ?

最後に永田先生は、「僕が一番注目しているのは、タンパク質の品質管理と老化、病気の発生というテーマです。毎日ものすごい勢いで複雑な工程を経て生み出されるタンパク質ですから、生産工場である細胞は加齢とともに疲弊するはず。タンパク質を製造する工場の老朽化によって不良品の量が増え、さらに従業員の高齢化で、不良品をチェックする品質管理部門の監視システムが衰え、同時に良品が不足した部分を、不良品で補ってしまうために、もともと多くのタンパク質が協調して働いている細胞の中で、その社会の秩序そのものが乱れ始めた状態が老化なのではないかと考えています」と老化のメカニズムについて独自の論を語ってくれた。

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教えてくれたのは・・・・・・

京都産業大学総合生命科学部学部長
京都大学名誉教授
永田和宏(ながた・かずひろ)先生

1947年滋賀県生まれ。’71年京都大学理学部卒業後、森永乳業中央研究所研究員、’79年京都大学結核胸部疾患研究所研修員、同研究所講師、米国国立癌研究所留学を経て、’86年に京都大学胸部疾患研究所教授、’98年より京都大学再生医科学研究所教授、2010年4月より現職。短歌結社「塔」主宰の歌人としても活躍中。朝日歌壇選者、宮中歌会始詠進歌選者などを務め、2009年紫綬褒章受章。近著に『タンパク質の一生』(岩波新書)、歌集『日和』(砂子屋書房)など。

撮影/久間昌史(メイン画像)、取材・文/宇山恵子
2010年4月号「HBR」より