1. 肌の若返りで注意すべきポイントとは?【肌の再生医療とアンチエイジング】

2018.02.10

肌の若返りで注意すべきポイントとは?【肌の再生医療とアンチエイジング】

美容医療の治療技術は急速に進歩し、再生医学の技術までが美容医療に応用されようとしている。再生能力が減退していく老化肌に、変幻自在に成長するiPS細胞(人工多能性幹細胞)を移植すれば、きっと肌の若返りに貢献することだろう。その可能性と注意すべきポイントについて東京大学医学部形成外科教室講師・吉村浩太郎先生に聞いた。

肌の若返りで注意すべきポイントとは?【肌の再生医療とアンチエイジング】

皮下脂肪は肌の若さと女性美の象徴

「脂肪組織、特に皮下脂肪は、女性らしい若さと美しさには欠かせないもの。瘦せすぎて脂肪組織がなくなってしまうと、ムンクの『叫び』のように女性美からはかけ離れてしまいます」と東京大学医学部形成外科学教室講師の吉村浩太郎先生。

皮膚は表面から表皮、真皮、皮下組織という三層構造になっており、皮下組織のほとんどは脂肪組織でできている。脂肪を蓄えた皮下組織は、体温を一定に保ち、外からの衝撃を和らげるクッションのような役割をし、真皮と結びついて皮膚をたるみやシワから守っている。また皮下組織には、皮膚全体に栄養を送り込む毛細血管があり、さらに、皮膚で発生した老廃物や汚れ、余分な水分などを排出するリンパ管もあり、皮膚の代謝には欠かせない部分でもある。そんな皮下脂肪組織も加齢とともに委縮してくる。若い頃はたっぷりと中綿を含んだふかふかの柔らかい布団のように、皮下脂肪が多くて分厚かった皮下組織も、加齢とともに中綿=脂肪が減り、せんべい布団のように薄く硬くなる。

エストロゲンが皮下脂肪を増やす

「皮下脂肪は直接注入して増やす方法もありますが、皮下脂肪を増やしたり、柔軟な皮膚組織を育てるためには、女性ホルモンの一種であるエストロゲンが有効です。しかし、加齢とともにエストロゲンの分泌は減少し、閉経以降は、ほとんど分泌されなくなる。このため、皮下組織が瘦せてシワやたるみが目立ち始めます」と吉村先生。これを解決する方法の一つに、女性ホルモンを投与することが挙げられる。

幹細胞をたたき起こすレーザーなどのプチ整形

ここ数年で大きな注目を集めているのが再生医療。特に「幹細胞」という、いろいろな細胞に変身でき、増殖能力も高い「万能細胞」を移植する方法が注目を浴びている。

実はケミカルピーリング、レーザー照射、メソセラピー、光治療などプチ整形と呼ばれる美容医療は、眠っている幹細胞を活性化させて皮膚の若返りを狙った治療法。シワやシミのある部分に熱ショックを加えたり組織にあえて傷をつけることで炎症を引き起こしたり、これを修復しようとする幹細胞の力で肌を再生する方法です。また、肌に損傷を与えずに、損傷を受けた後に分泌される物質(血小板由増殖来因子など)のみを投与することで、幹細胞が皮膚の修復を始めるように促すことも可能です」。

吉村先生はこれだけにとどまらない幹細胞の可能性も示唆する。

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年齢とともに減る幹細胞を補充する

「幹細胞は加齢とともに減少し、それにともなって皮膚や血管なども萎縮、修復不全などを起こします。これを防ぐために自分の幹細胞を補充したり、若いときに保存しておいたiPS細胞(人工多能性幹細胞)を補充するなどして、皮膚の若々しさを保つ方法が研究されています。」と説明する吉村先生。老化した幹細胞を培養してもなかなか増殖しないため、幹細胞の長期保存法や、培養期間を短縮する技術などが期待される。

「幹細胞移植が実用化された場合も、安全性と有効性、倫理性を保つためには、十分な科学的検証が求められます。守らなければならない条件があり、医療サービスを受ける患者側は、利便性や経済性だけで行動しないように注意する必要があります。また医療機関側も、細胞を取り出し、移植する場合に、異物の混入、感染症、細胞の取り違えなどを起こさないように、厳重な管理が要求されます」。

老化にあわせて繰り返し微修整する

ボトックスやヒアルロン酸注射、レーザー治療などは、安くて手軽だが、美容外科手術のように、治療効果が一生続くわけではない。「アンチエイジング治療とはそういうものです。つまり老化も急激に起こるわけではなく、徐々にしかも永久に進行していくもの。だから老化の進行に合わせて繰り返し微修正していく方法が、理にかなっているのです」と吉村先生。

最近はプチ整形ブームで新しい治療法が次々に開発・宣伝されては消えていきます。すぐに飛びつくのではなく、2~3年くらい様子を見て、信頼性の高い施術法だと確信が持てるまで、安全性や効果を見極めることが大切です」と吉村先生はアドバイスした。

教えてくれたのは・・・・・・

東京大学医学部形成外科学教室講師
吉村浩太郎(よしむら・こうたろう)先生

1985年東京大学医学部医学科卒業後、’90年に東京大学医学部付属病院形成外科助手、’94年米国ミシガン大学形成外科留学、’98年より現職。日本形成外科学会専門医・評議員、日本再生医療学会評議員、日本抗加齢医学会評議員、カリフォルニア大学デービス校客員教授などを務める。『美容医療ハンドブック』(角川SSC)を監修。

撮影/久間昌史(メイン画像)、取材・文/宇山恵子
2010年4月号「HBR」より