1. 【貧血に効く食事】効率のいい鉄分の摂り方って?

2018.03.17

【貧血に効く食事】効率のいい鉄分の摂り方って?

女性に多いと言われる貧血。工学博士の後藤日出夫先生によると、そのほとんどは鉄分不足による鉄欠乏性貧血とのこと。となると改善には鉄分の補給が不可欠ですが、ただやみくもに鉄分の多い食材を食べればいいというものではありません。そこで、効率の良い鉄分の摂取法をお伝えいたします!

【貧血に効く食事】効率のいい鉄分の摂り方って?

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食べ合わせや調理法がポイントに

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効率良く鉄分を吸収するには、一緒に摂る栄養分や調理法など、食べ方が重要になってきます。まずはその5つのポイントを教えてもらいました。

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後藤日出夫先生
工学博士、分子化学療法研究所代表。米国ボルグワーナーケミカル社中央研究所などで各疾患の発生原因や治療方法を研究し、独自の疾病体質改善食事療法にたどり着く。後に「分子化学療法研究所」を発足。著書に『アレルギー・炎症誘発体質の真実』(理工図書)、『女性の9割が 鉄マグ欠乏症』(健康ジャーナル社)など。

①炭水化物はよく噛む

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「野菜類など非ヘム鉄は、調理法や食べ合わせによってその吸収率が大きく変わってきます。ブドウ糖は鉄の吸収率向上の手助けをしてくれるので、炭水化物を食べるときはよく噛んでブドウ糖にまで消化しやすくする、ということがポイントになってきます。またクエン酸やビタミンCも鉄の吸収率を上げてくれるので、これらを含む食材と一緒に摂取すると良いでしょう」

「反対に、卵や牛乳、チーズに含まれるリン酸、また長ネギやほうれん草に含まれるシュウ酸、茶葉などに含まれるタンニン酸は、鉄の吸収率を下げてしまうので、食べ合わせには注意が必要です。また、カルシウムも鉄の吸収を邪魔してしまう性質があります。ですから食事の時に、牛乳や、タンニン酸の多い玉露などを飲むことは、実は避けたほうが良いのです」

②ゴマはすり潰して吸収を良くする

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大豆やそら豆といった種子類、またゴマやアーモンドといった種子類は比較的多くの鉄分を含んでいますが、鉄分の吸収口である十二指腸上部で消化されないため、鉄分補給のための食材としては適していません。ただしすり潰すなどして消化されやすい状態にすれば、有効でしょう。ですからゴマやエゴマをすり潰して用いるゴマ和えは、鉄分補給においてはオススメの食べ方と言えます。また海藻類も多くの鉄が含まれていますが、アサクサノリのように胃の中で鉄分がイオン化されるものを除き、ほとんど鉄は吸収されることはありません」

③食事前の水分の摂り過ぎはNG

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「非ヘム鉄は、胃の中でしっかり酸性状態にしておかないと吸収されない、という性質があります。食事前に水分を摂りすぎると、胃液を薄めて食べたものが酸性になりにくくなるので、気をつけてください。また『胃もたれを起こしたくないから』と食前に胃薬を飲む人もいるかと思いますが、胃薬は胃酸分泌をおさえるものや、食べたものの酸性度を弱めてしまうものもあるため、鉄分補給という観点においては好ましくないのです」

④ヘム鉄は毎日少しずつがポイント

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「日本では、野菜類などの非ヘム鉄より肉類などのヘム鉄のほうが吸収率が良いと信じられています。ですが、最近の研究で非ヘム鉄の消化吸収メカニズムがかなり解明されてくると、むしろ鉄欠乏時には非ヘム鉄のほうがヘム鉄より吸収率が高くなることが明らかになっています。ただ、非ヘム鉄は調理法や食べ合わせなど、周囲の環境によってその吸収率が影響を受けやすいという性質がありますので、食べ合わせや調理法に注意することが大切です。

一方ヘム鉄は、鉄欠乏時の吸収率はあまり良くないものの、一緒に食べる食材など周囲の環境を受けにくいという良さも。つまり安定して吸収はされるので、鉄欠乏にならないよう日頃から少しずつ摂る、という予防的食べ方がオススメです」

⑤穀類は精製していないものを選ぶ

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「食品に含まれる鉄分は、精製すると大きく減ってしまいます。たとえば米の場合、玄米では100gあたり2.1mgの鉄分が含まれていますが、これが精米した白米になると一気に0.8mgまで減少してしまうのです。小麦も全粒なら3.2mg/100gですが、薄力粉になると0.6mg/100gに。とくに砂糖は、黒砂糖なら100gあたり4.7mgの鉄分を含有しているのに、精製した上白糖になると、それがほぼゼロに! 貧血に悩まれているなら、できるだけ精製されていない食材を選ぶ、ということも大事になってくるでしょう」

鉄の摂取は毎日少しずつがポイント

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病院で「鉄欠乏性貧血」と診断され、鉄製剤を処方してもらったことがある人は多いと思います。しかし鉄製剤を飲んだものの改善が感じられなかった、という人も多いのではないでしょうか。その理由を、後藤先生は詳しく教えてくれました。

「鉄製剤に含まれるのは無機鉄である非ヘム鉄で、その処方量は貧血の程度や投薬効果により、1錠50mgのものから、100mg、200mgのものまであります。しかしこれだけの鉄製剤を飲んでもなかなか貧血が改善されないことから、無機鉄(非ヘム鉄)の吸収率は5%、時には2%にも満たない、ということになっているように思われます。ですが本来鉄分は、1日に1~2mgの補充で充分なはず。なぜこのように多量の鉄を摂っても改善されないのでしょう? そこで少し専門的にはなりますが、鉄の補充と排出のメカニズムについて説明したいと思います。最近の研究では、血中の鉄分濃度は、肝臓から分泌されているヘプシジンという物質でコントロールされていることが明らかになっています。血中の鉄量が多くなるとヘプシジンは、体に貯められている貯蔵鉄・フェリチンに働きかけ、フェロポチンという鉄の取り込み口を閉鎖し、鉄の放出や小腸からの吸収を一斉に止めてしまうのです。こうして一旦ブレーキがかかってしまうと、元の鉄吸収可能状態に戻るまでに3日間が必要。その間に食事から摂った鉄分は、ほぼ全てが体内に取り込まれることなく排泄されてしまうのです。鉄製剤を飲んでからフェリチンの完全ブレーキが効くまでの時間は約4時間。その後、血中の鉄濃度は急速に落ちていき、摂取後12時間を過ぎると鉄製剤を飲む前よりも血中の鉄濃度は下がってしまいます。つまり鉄製剤を飲むと、一時的に貧血が酷くなるというわけです。おそらく非ヘム鉄の吸収率が低いと言われているのは、鉄製剤で過剰量の鉄を一度に摂ってしまうことで鉄の取り込み口(フェロポチン)が閉鎖されてしまい、体に取り込まれなくなるからでしょう。従って、鉄の吸収は、“一気にたくさん”ではなく“毎日少しずつ”がポイントになります。具体的には、1日5mg以下程度が効率の良い摂取量と思われます」フェリチン(=貯蔵鉄)が欠乏している人多数

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実は鉄製剤などの飲み過ぎにより、血中の鉄欠乏だけでなく、この貯蔵鉄(フェリチン)が欠乏している人も少なくないのだそう。
「腸から吸収された鉄分は、血中の鉄濃度を一定に保つために使われます。そこから余った鉄はいったん“貯蔵鉄(フェリチン)”として肝臓などに蓄えられ、血中の鉄が不足すると放出されます。つまり食事から摂取する鉄分が多少不足したとしても、きちんと血中に鉄を補充しくれるのですぐには貧血症状は起きないということ。しかし最近はその貯蔵鉄(フェリチン)が少なく、少しの運動量の増加で貧血になる人が増えています。たとえばちょっと階段を上り下りしたり、人混みにいたりしただけで貧血を起こす方は、血中の鉄濃度を知ることも大切ですが、この貯蔵鉄(フェリチン)の数値を調べてみましょう。でないと適切な貧血診断はできませんから」

体を守るために鉄不足になっている?

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また鉄過剰症は、鉄製剤による鉄の過剰摂取以外に、C型肝炎や脂肪肝のような肝臓疾患によって肝臓の鉄コントロール機能が故障してしまったときなどにも起きます。 

鉄は人体にとって必須ですが、同時に非常に強い毒性も持っているもの。過剰になると活性酸素を産み出し、体内の様々な器官を傷つけ機能障害を引き起こすこともあります。しかし鉄は、他のミネラルのように尿などと共に排泄されることはありません。それゆえC型肝炎などで肝臓のコントロール機能が壊れ、鉄の吸収を抑制できなくなり貯蔵鉄がたまりすぎた場合は、“瀉血(しゃけつ)”といって、血液を抜いて鉄量を正常に戻すことがおこなわれるほどです」

反対に、「体を守るために鉄不足になっていることもある」と後藤先生は言います。だからこそ安易な鉄製剤の摂取は非常に危険なのだそう。

「細菌やがん細胞も、増殖するためには鉄を必要とします。そこで体は、細菌やがん細胞に鉄を取り込ませないため、あえて鉄分を不足させることで防御しようとします。このような理由から貧血症状を起こしている場合、そこに鉄製剤やサプリメントを摂ると、細菌やがん細胞を増殖させ病気を悪化させることに。またピロリ菌を保持している人や、歯槽膿漏、肥満、炎症体質の人は、体の防御作用として鉄欠乏状態を生み出している場合がありますから、あまりに貧血が続く場合は、そういった病気を抱えていないか調べてみることも大切でしょう」

体内器官だけでなく、鉄の過剰摂取は脳にも悪影響

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鉄は脳内のドーパミンやセロトニン分泌にも必要ですから、もちろん鉄欠乏はNG。しかし一方で、アルツハイマーやパーキンソン病といった脳の病気では、その病巣に鉄の異常蓄積が認められていますから、鉄過剰も厳禁ということ。こういったことからも、安易に鉄製剤やサプリメントを服用するのではなく、食事から摂取するように努めてほしいと思います」

そのためにも効率の良い鉄分の摂り方を覚えておくことは不可欠。「鉄製剤飲んだりサプリメントを摂っていたり、鉄分が多い食材を摂っているつもりなのに貧血が治らないという方は、その吸収率や食べ合わせなどを一度見直してみてください

取材・文/山本奈緒子
6年間の会社員生活を経て、フリーライターに。『ViVi』や『with』、『VOCE』といった女性誌の他、週刊誌や新聞、WEBマガジンで、インタビュー、女性の生き方、また様々な流行事象分析など、主に“読み物”と言われる分野の記事を手掛ける。