1. ポジティブな言葉が作る顔【著・松本千登世】『結局、丁寧な暮らしが美人をつくる。』【特別全文公開】第3話

2018.02.19

ポジティブな言葉が作る顔【著・松本千登世】『結局、丁寧な暮らしが美人をつくる。』【特別全文公開】第3話

美容ジャーナリスト・エディターとしてVOCEでも出演、取材、編集、執筆と活躍中の松本千登世さん。その美しさと知性と気品が溢れる松本千登世さんのファンは美容業界だけにとどまらない。こちらの美容エッセイ『結局、丁寧な暮らしが美人をつくる。』(講談社)から、ぜひ今日も、「綺麗」を、ひとつ、手に入れてください。

ポジティブな言葉が作る顔【著・松本千登世】『結局、丁寧な暮らしが美人をつくる。』【特別全文公開】第3話
松本 千登世
ビューティエディター
by 松本 千登世

ポジティブな言葉が作る顔、ネガティブな言葉が作る顔

その日、甥が所属するサッカー部の試合を初めて観戦。身内の贔屓目か、彼のチームのほうが圧倒的に押しているように見えたけれど、幾度となくゴールを狙うもチャンスを掴み切れないまま、試合は均衡を保っていました。

時間が経ち、少しずつ平静を取り戻すにつれ、ふとあることに気付かされました。彼のチームから聞こえてくるのは「サンキュー」「ドンマイ」「悪い悪い」といったどこかポジティブな掛け声。一方、相手チームはというと「何やってんだよ」「だめだろ」「なんでできないんだよ」と、相手を責めるようなネガティブな言葉ばかり。

ことスポーツに関しては、綺麗事ではうまくなれないし、ましてや勝てないのは承知のうえ。けれど、技術や体力に差がない場合、前向きか後ろ向きかの差が試合の勝ち負けを分けるんじゃないか、そう思ったのです。

結果は1-0で甥のチームの勝ち。もちろん、それが言葉の差だったのかどうかは、知る由もないけれど。

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抗加齢を研究対象にするある医師にこんな話を聞きました。「ポジティブな言葉を使う人ほど、長寿なんですよ。ちゃんとデータがあるんです」。

修道女700人への調査によると日記に「愛」「希望」「感謝」「感心」「幸福」「満足」などといったポジティブな言葉を多く使う人と、「悲」「無関心」「困惑」「恐怖」「心配」「困難」などネガティブな言葉を多く使う人を比較したところ、60年後、80歳になったときに前者は90%生存し、後者は35%しか生存しなかったのだそうです。

ポジティブな言葉を使う人は、気持ちももちろんポジティブ。それが笑顔や幸せに繋がり、結果、長寿傾向にあるというのです。「言霊」と言われるように、言葉には不思議な力が宿っていて、言葉通りの結果を呼ぶ……。そんなことが本当に起こりうるなんて!

日ごろの言葉はどうだっただろう? 無意識のうちにネガティブな言葉を遣ってはいなかったか? もっと意識しなくちゃ。言葉にする前に、もっと。

「早起きしたら、いい人になっちゃったみたい」

ある女性がこんな話をしてくれました。

少しだけ早起きを始めてみたこと。その分、会社に早く行ってみたこと。すると、朝、会社を掃除してくれている人がいると気付いたこと。その人に「おはようございます」と声をかけられたとき、「いつもありがとうございます」という感謝の言葉が口をついて出たこと。それが意外にも、気持ちがよかったこと。その出来事がきっかけになって、周りに「ありがとう」と言葉にする機会が増えたこと……そして、彼女はこう言ったのです。「笑っちゃうんだけど、私、早起きしたら、いい人になっちゃったみたい」。

正しく生きると、心地いい。自分が心地いいと、周りも心地よくなる……。これがきっと、正しい美しさ。

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「楽をすると楽な音しか出ないんですよ」

偶然テレビで観た世界のナベサダこと、渡辺貞夫さんのインタビュー。「マイクやPA装置を使えば、いくらでも楽に音を出すことはできる。だけど、楽をすると楽な音しか出ないんですよ」。

当時、御年80歳。年齢とともに息遣いが変わるのは、仕方のないこと。ところがこの人は、決して楽をしない。だから、若いときには出せなかった、もっと言えば80歳にならなければ出せなかった音に到達したのじゃないか? それでもなお、自分の音に納得がいかないと言うのです。いや一生納得なんていかない、と……。私たちは今、この言葉に学ぶべき、強くそう思いました。

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家事も仕事も、美容さえも「時短」と「手抜き」が時流。しかも、いけないと思いながら、着慣れた黒い服を選び、無難なベージュの口紅を選ぶ。ロングヘアをいいことに、来る日も来る日も、起き抜けの状態をさっと整えるだけ。あまりにひどければひとつにまとめちゃえばいい……。毎朝顔色がくすみ、毎朝口角が下がっていたのは、年齢のせいじゃない。楽をしすぎて自分自身に飽きたからじゃないか? そう思ったのです。

もう一度「手間」を心がけたいと思います。毎日、ほんの少しだけ。


結局(けっきょく、丁寧(ていねい)な暮(く)らしが美人(びじん)をつくる。 今日も「綺麗(きれい)」を、ひとつ。

結局(けっきょく、丁寧(ていねい)な暮(く)らしが美人(びじん)をつくる。今日も「綺麗(きれい)」を、ひとつ。

《松本千登世さんの美容エッセイを全文公開中!前回の記事はこちら》
幸せは「質」より「量」【著・松本千登世】『結局、丁寧な暮らしが美人をつくる。』【特別全文公開】

松本 千登世
松本 千登世
1964年生まれ。美容ジャーナリスト、エディター。航空会社の客室乗務員、広告代理店勤務を経て、婦人画報社(現ハースト婦人画報社)に勤務。その後、エディター&ライター、フリーランスに。美容エッセイに定評があり、数多くの女性誌で連載中。