1. こだわり=面倒?【著・松本千登世】『結局、丁寧な暮らしが美人をつくる。』【特別全文公開】第4話

2018.02.28

こだわり=面倒?【著・松本千登世】『結局、丁寧な暮らしが美人をつくる。』【特別全文公開】第4話

美容ジャーナリスト・エディターとしてVOCEでも出演、取材、編集、執筆と活躍中の松本千登世さん。その美しさと知性と気品が溢れる松本千登世さんのファンは美容業界だけにとどまらない。こちらの美容エッセイ『結局、丁寧な暮らしが美人をつくる。』(講談社)から、ぜひ今日も、「綺麗」を、ひとつ、手に入れてください。

こだわり=面倒?【著・松本千登世】『結局、丁寧な暮らしが美人をつくる。』【特別全文公開】第4話
松本 千登世
ビューティエディター
by 松本 千登世

こだわり=面倒? 時間=無駄?

縁もゆかりもない田舎にある工房に弟子入りをした、20歳になったばかりという青年の言葉。「僕は勉強もできない、運動もできない、音楽もできない、おまけに容姿にも自信がない。でも、ね。我が国のもの作りの素晴らしさに触れたとき、これだと直感しました。こんな僕でも、日本一を創り出せるかもしれない。いや、世界一にだってなれるかもしれない……。そう思ったんです」。

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日本が生み出すものに誇りを持っていたか? それを生み出す人に敬意を払っていたか? 大人の入口に立ったばかりの青年に、こんなにもシンプルなことを教わるなんて。こだわり=面倒、時間=無駄、そんな現代の風潮に押され、毎日が流れるように過ぎていく……これじゃいけないと、改めて思いました。

大げさじゃなくていい。いつもより時間をかけて料理を作ってみよう。愛着のある洋服の傷みを自分で直してみよう。美容液を丁寧になじませてみよう。DNAに刻まれた才能を信じて。

「正解はない」と「不正解はない」との、雲泥の差

あるファッション誌で女優・板谷由夏さんが語っていた言葉。「デニムの着こなしに、不正解はないと思うんです」。

「正解はない」という言葉ばかりを見聞きし、当たり前のように遣っていた私にとって、「不正解はない」という表現はとても新鮮に感じました。ふたつは似て非なるもの。ない正解を探すのは、いつまでたっても満足できないことを意味し、一方、不正解がないのは何もかも正解であることの裏返し。彼女が輝いている理由がわかった気がしました。

私たちは誰しも不正解のない美しさに満ちている、そう思うとなんだかわくわくしませんか?

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柔らかい脳は老けない、心も肌も体も

思い通りにいかないことってあるもの。仕事では、特に。いや、私なんて、充分「大人」なのに、むしろそのほうが多いくらい……。

まだ編集部に在籍していたころ、あるテーマで思わぬ変更が五月雨式に生じ、何度も何度もデザインの修正をお願いしたことがあります。しまいには、最初のスタイリッシュな印象がなくなってしまうくらいに。

コントロールしきれない自分を不甲斐なく思いながら、デザイナーに謝ると……? 当の本人はにこにこしてる。「もしかしたら、さ。このほうが読者にとってかえってわかりやすくなったんじゃない?」。いつまでも最初の形にこだわって表情をこわばらせる私とは、まるで対照的。「あっ、そうだ! 逆手に取って、こんな見せ方もできるよ」。

結果、仕上がりは想定外。思い描いていたよりもずっと面白いものができあがったのです。彼は、どんな変化球が来てもまっすぐ受け止め、美しく強い球筋にし、説得力を持たせて返してしまう人。しかも穏やかな心で。この人ってみずみずしい、この人って力強い、そう思った瞬間でした。

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脳も心も柔らかいって、こういうこと。柔らかいから、自分にも他人にも負荷がかからない。どんな力が加わっても、ぽきっと折れることがない。それだけじゃないのだと思います。独特の柔らかさの波動は周りに伝わる力を持っているから、知らず知らずの間にこっちまで柔らかくなってる……。

何よりすごいのは、柔らかさは不思議と好ましい結果を生むってこと。凝り固まるよりもずっとずっとみんなを幸せにする結果を。肌だって体だって、同じなのだと思います。肌が硬いとシワやたるみが定着しやすいし、体が硬いとバランスが崩れたり、余計な脂肪がついたり。

そういえば、「老化とは、ひと言で言えば、すべてが硬くなること」、そう言った女性がいたっけ……。柔らかい女が引力を持つのは、そのために違いありません。


結局(けっきょく、丁寧(ていねい)な暮(く)らしが美人(びじん)をつくる。 今日も「綺麗(きれい)」を、ひとつ。

結局(けっきょく、丁寧(ていねい)な暮(く)らしが美人(びじん)をつくる。今日も「綺麗(きれい)」を、ひとつ。

《松本千登世さんの美容エッセイを全文公開中!前回の記事はこちら》
ポジティブな言葉が作る顔【著・松本千登世】『結局、丁寧な暮らしが美人をつくる。』【特別全文公開】第3話

松本 千登世
松本 千登世
1964年生まれ。美容ジャーナリスト、エディター。航空会社の客室乗務員、広告代理店勤務を経て、婦人画報社(現ハースト婦人画報社)に勤務。その後、エディター&ライター、フリーランスに。美容エッセイに定評があり、数多くの女性誌で連載中。