1. 病気が早く治る患者はいったい何が違うのか【病院の選び方・心がけetc.】

2018.03.31

病気が早く治る患者はいったい何が違うのか【病院の選び方・心がけetc.】

医師の診断を受ける際に知っておきたい「病気が早く治るために必要な心がけ」について、大泉学園複合施設施設長・ねりま健育会病院院長の酒向正春さんにお伺いしました。

病気が早く治る患者はいったい何が違うのか【病院の選び方・心がけetc.】

良い医療や良い治療を患者が見分けるにはどうすればよいのでしょうか? 『患者の心がけ 早く治る人は何が違う?』を著した脳リハビリ医の酒向正春氏が解説します。

同じ病気にかかったふたりの患者さんがいるとして、「それぞれの心がけ次第で、病気が治る、治らない、という運命の分かれ道はありますか?」と聞かれたら、筆者は「あります」と答えます。

「治る、治らない」の違いは、実は急性期医療において最もはっきりと分かれます。もちろん病気そのものの深刻さによりますが、同じ程度であれば、どこまで治すことができて、ここまでしか治らないということは、担当する先生の腕にもよるわけです。だからこそ、どの先生に当たるのか? ということが非常に大事になってきます。

しかし、良い先生に診てもらったから必ず治るということではありません。ふたりの患者さんのうち、心がけが良い患者さんのほうが治る可能性は高くなり、そうではない患者さんは可能性が低くなります。

どのような心がけが大切なのか

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たとえば病気によって障害が出たような場合、どのくらい回復させられるか、というのは、患者さん自身が「回復したい」という意思を持っているかどうか、ということが何よりも大切なのです。

いくら良い先生のもとで治療を受けることができても、患者さんに「良くなりたい」という気持ちがあるかどうかで結果は変わります。極端に言えば、患者さんが「治したい」と思わなければ、そこで全てが終わってしまう可能性もあります。

その医師を信頼しているか、という点も重要です。「担当の医師を信じることができない」「医師に任せる気持ちになれない」という場合には、治療もうまくいきません。

患者さん本人が「病気を治したい」と本気で思い、かつ医師を信頼しているということが決め手になるのです。したがって、「任せる気持ち」になれる病院・医師・医療チームを選ぶことが、「心がけ」の第一歩です。

さらに、患者さんの退院後の人生を考えると、本人だけでなく家族も心からそれを願っているか、ということも大切です。家族の支えが回復への大きな原動力になります。すなわち、治療チームに患者さんと家族が一緒に参加して、初めてチーム医療になります。

筆者は脳外科医からリハビリ医に転向したひとりの医師として、急性期病院、リハビリ病院、そして、慢性期病院のさまざまな現場を見てきました。その中で、病院という組織には、どうしてもやる気があるところと、そうではないところの格差が生まれてしまう、ということを実感しています。

病院側のやる気というのは、経営者やスタッフをリードする現場の医師の考え方、また、どのような人材が集まっているかなど、さまざまな要因が複雑に絡み合って決まります。しかし、やる気に直結するポイントはとてもシンプルだと私は考えています。

「自分たちはどのような医療を目指すのか」

その理念を病院に関わる全ての人間が共有して実行できているかどうか。それができているならば、いくらでも状況をいい方向へ変えていけるはずなのです。

やる気がある病院かどうかを見分けるポイントについてお伝えしましょう。救急車で病院へ搬送されるような急を要するケース以外は、患者さんには病院を選択する権利があるのですから、ぜひ病院を見学してください。そのときに、まず確認すべきは次の3つです。

1. 病院内の廊下や階段などに、不要なものは置かれていないか。ちゃんと整理整頓がされているか。

2. 働いているスタッフがきちんと笑顔で挨拶ができているか。雰囲気が悪くないか。

3. 廊下などの共有スペースに変な臭いはしないか。掃除や汚物の処理などがきちんとできているか。

どれも当たり前のことではないか、と感じた方も多いと思います。最低限の原則とも言えるでしょう。しかし、この当たり前のことをきちんと継続することができない病院は意外と多いのです。

入院する場合には事前に、担当医師の説明を受けるはずなので、そのときも注意を払って話を聞くようにします。何より医師側は、入院する患者さんを治療するためには、「患者さんの状態がなぜ悪くなっているのか」という理由をきちんと把握していなければなりません。

とくに、急性期病院からリハビリ病院へ移る場合には、専門治療は終わっているのですから、障害が現れている原因は脳なのか、脊髄なのか、それとも他の場所なのか、明らかにしておく必要があります。その原因の管理が医者のコントロールを超えるものなら、リハビリどころではないわけです。

次のポイントは全身の状態

心臓や呼吸が不安定である、精神状態が良くない、発熱が続いている、栄養状態が悪いなど、基礎的な体調が不良であれば積極的なリハビリはできません。体調が整って初めてリハビリが成り立つわけです。患者さんの状態を適切に診断してもらい、「いまは寝たきりですが、ここまでは良くなります」といった説明を、医師が具体的に示せることが重要です。

病院によっては、主治医が患者さんのことを把握していないために、リハビリ治療の説明を理学療法士や作業療法士などのセラピストが行うこともあります。このような場合には、その病院で本当によいのかどうか、もう一度冷静に考えてみるべきです。

急性期病院からリハビリ病院へ移る際、一般的には急性期病院から転院先を薦められます。したがって、薦められた病院でよいかどうかを、患者さん、もしくは家族が判断する、という場面が訪れます。

リハビリ病院という存在さえ知らない方も多いのが現状で、ほとんどの場合、急性期病院で紹介された病院を入院先に決めています。とはいえ、リハビリ病院も千差万別。やはり、患者さんのほうから複数の候補を挙げてもらうようお願いし、それぞれの病院を見学することが必要です。そして、必ず治療を担当する医師の話を聞いてください。

病院へ赴くときには、患者さんの病気がどのような状態なのかがわかる検査画像を、急性期病院からCD―R(コンパクトディスク)などにコピーしてもらって受け取り、持参することも大事です。また、急性期病院の主治医の診療情報提供書(いわゆる紹介状)も忘れずに。

同じくリハビリ病院でも、担当の先生が脳などの診断画像を見て、「患者さんの病気の原因はこれで、急性期治療はコントロールできています。現在はこの損傷によってこんな障害をきたしています。リハビリをすればここまで回復する可能性があります」といった説明がしっかりとできるかどうかを見極めてください。

患者さんの全身状態が安定しているかどうかについては、紹介状を見れば医師なら誰にでもわかることです。しかし、脳の画像診断から「いまはこうだけれど、原因を考えると将来的にはリハビリによってどこまで良くなるか」は、日頃から勉強している医師や、信頼できる治療チームでなければ予測できません。したがって、医師の分析によるその展望をきちんと聞けるかどうかがポイントです。本来、患者さんの現状と適切な治療、リハビリ後の回復の程度を把握し伝えることは、当たり前のことなのです。

医師でわかる要注意のリハビリ病院

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医師というのは、たくさんの患者さんを担当することになります。したがって、全てのことに医師が直接関わるわけではありません。リハビリには、理学療法士や作業療法士、言語聴覚士といったセラピストがいますし、病気の治療そのものに関しては医師の指示にしたがって看護師が動きます。それ以外にも、ケアワーカー、ソーシャルワーカー、薬剤師、管理栄養士や歯科衛生士などの専門職がいます。

たくさんの職種の医療スタッフがいる中で、患者さんに何が必要で、人材をどのように配置すればうまくいくか、ということを調整するのが医師なのです。いわば、オーケストラの指揮者です。どこのパートの音色が悪いのか、うまくまとまらない理由を医師が見つけて、「そこをちょっと修正しましょう」と指示を出します。

しかし、実際には指揮者としての力がなく、オーケストラの音色が悪いままの状態、つまり、改善の余地の残る治療を漫然と続けている病院が意外と多いのが現実です。

また、病気の治療は急性期病院の指示通り進めることが基本ですが、疑問のあるときは前医に問い合わせて確認します。そして、患者さんの質問に誠実に親切に答えます。当然、それができない医師がいるリハビリ病院もやる気がないと判断されます。

急性期病院の医師は、患者さんが退院するときに、リハビリ病院の医師に向けて紹介状を書きます。極端に言えば、紹介状に書いてある通りに再発予防と全身状態の管理をすればなんとかなります。リハビリ治療の現場では、患者さんを日中に寝かさないだけで、後は患者さん自らの回復力で自然回復するということも多いのです。

病態に応じた全身管理ができる病院を選ぶ

急性期病院と回復期のリハビリ病院では、それぞれの役割が違うわけですから、患者さんとご家族もそのことをきちんと認識しておく必要があります。リハビリ病院というのは、文字通りリハビリを行うための病院なので、手術をしたり、がんを治療したりするような医療は行いません。

熱が出た、軽い怪我、そういったいわゆるプライマリ・ケアと呼ばれる治療はリハビリ病院で当たり前にできるのですが、ICU(集中治療室)治療はできません。

いわゆるICU体制というのは、50人の患者さんがいる場合、看護師は最低でも50人は必要で、多くて100人ほどいるものです。一方のリハビリ病院には、ワンフロアに50人の患者さんがいる場合、夜勤の看護スタッフの数は3人から4人が現状です。

このため、リハビリ病院では集中的な全身管理や治療ができず、再び急性期病院での治療が必要となる場合もあります。

これは、「急変」と呼ばれる状態が多く、治療はもとの急性期病院に戻って行うことになります。ですから、リハビリ病院に入院した患者さんが、次から次へとすぐに急性期病院にたくさん戻るような場合は、あまり良くない病院だと言えます。全身管理をしつつ、積極的なリハビリ、チーム医療が行われている病院を選びましょう。

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『患者の心がけ 早く治る人は何が違う?』(光文社新書)

【著者プロフィール】
酒向 正春(さこう まさはる)

大泉学園複合施設施設長・ねりま健育会病院院長。1961年愛媛県宇和島市生まれ。愛媛大学医学部卒。1987年脳卒中治療を専門とする脳神経外科医を経て、脳リハビリテーション医へ転向。2012年副院長・回復期リハビリテーションセンター長として世田谷記念病院を新設。2014年著書『あきらめない力』を執筆。2015年健育会竹川病院院長補佐就任。2016年練馬区に健康医療福祉都市構想委員会/練馬プロジェクトを始動。

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