1. 【齋藤薫】「運の良い女」よりも、「運より強い女」になる方法。人間の天才"あの人"に教わった

斎藤薫の美容自身2

2018.04.11

【齋藤薫】「運の良い女」よりも、「運より強い女」になる方法。人間の天才"あの人"に教わった

人気連載「斎藤薫の美容自身 STAGE2」。 今月のテーマは”「運の良い女」よりも、「運より強い女」になる方法。人間の天才"あの人"に教わった"について。毎月第2水曜日更新。

【齋藤薫】「運の良い女」よりも、「運より強い女」になる方法。人間の天才

あの人は、時間も空間も全て自分のものにしてしまっている!

 普段は忘れている"運"というもののエネルギー。思い出すのは、年末年始に今年の運勢を見る時。そして悪いことがあった時くらい。でももう一つ、何だか定期的に思い出させられるのが、2年に1度のオリンピック。全ての選手がその舞台を目指して死に物狂いの努力を重ねてやってくるのに、ほんの0コンマ何点の違いで、完全に明暗を分けてしまう。人生の明暗さえ分けてしまう。そこにはやっぱり運のいたずらや理不尽さを感じざるを得ないのだ。『運のいい女ひとの法則』という本がベストセラーとなり、その内容には深く深く納得したけれど、やっぱり運は気まぐれだと思わざるを得ない場面がたくさんあったから。

 今回ジャンプの髙梨沙羅選手が、銅メダルがとれたことに日本中が安堵したが、99・9パーセント金メダル確実と言われた前回のオリンピックで4位に終わったことに、一体どういう運が影響したというのか。彼女に運を敵に回す要因などあったはずもないし、運って一体何なのか、そもそも運が良い悪いに、明快な法則などあるのか、改めて疑問に思えてくる。

 いやその一方で、まさしく"勝利の女神"にまっすぐ愛される羽生結弦選手は、"前向き" "目指す自分をイメージする" "不安を残さない" "感謝と笑顔を忘れず"……などなど、「運が良くなる法則」を一つ残らずクリアしていて、なるほど運ってやっぱり正しく生きることの報酬なのだとも思えてくる。冷静に考えると、フリーの演技では羽生選手より10点近くも高い得点を叩き出した選手が他にいたのだから。そこだけ見れば、運をも味方につけたように見えるが、彼の場合は勝とうとするエネルギーの次元が他の選手とは違った。そういうとてつもない勝ち方だった。つまり運などには左右されず、それどころか運をも支配できてしまう絶対のチカラを持ってしまったのだろう。実力に精神力も忍耐力も行動力も、力と名のつくモノをすべて備えて、だから彼のもとに勝利が引き寄せられていった、そうとしか説明できない展開だ。

 1番納得したのは、心理学者が語った羽生選手の凄さについての見解。「羽生選手は、時間と空間を全て自分の思う通りに使える能力を持ってしまった」。なんだか異次元の話のように聞こえるけれど、これだと思った。多くの人の時間や空間が、何か成り行きだったり、何かの影響だったりでぼんやり動いていき、自分でコントロールしている実感を持つ人はそう多くないと思う。けれども羽生選手はどちらも完全に手中にあり、確実に自分で動かしている感覚を持っているはず。1分1秒が自分のもの。何があってもなくても自分の時空。何者の影響も受けず、流されることがないはずなのだ。でなければ、わずか3ヵ月前に大怪我をして、練習もできずにいて、でも復活して、絶対に金メダルをとるという確信を持つことなんかできないはずなのだ。ましてや痛み止めを飲みながら、本当に金メダルをとってしまうことなんて。

 もちろん誰にでも到達できる領域ではないが、弱冠23歳でその境地に達する者もいる訳で、理論的には誰にだって可能。おそらく時間と空間を自分の思う通りに動かすことができると、霊感に近い、未来を読み解く能力をも備えるのだろう。きっちり生きてきたキャリアのある大人には、ある種の予知能力が備わってくると言われるのも同じ理由。人間の意識はそこまで研ぎ澄まされると言うことなのだ。つまり、運など打ち負かす強い存在になること。これは誰にでも可能なのだ。"運の良い女になる"よりも、"運より強い女になる"こと、それなのだ。

正直言って、運が良い悪いは、言い訳に使う種類のものに他ならない。つまり大した努力もしないで幸せを摑む人を羨やむ時に、「あの子って運がいいよね」と言って自分を納得させる時に持ち出す。逆に、一生懸命努力をしたのに思うようにいかない時に「自分は運が悪い」とやっぱり自分を慰める時に持ち出す、運とは所詮その程度のものなのではないか? そう思った方が人生すっきりする。

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単純に、全てのことに「心を込めること」それだけで良いのだ

 じゃあ"運より強い女"になるためにはどうしたら良いか。ここでも2人のオリンピック王子の発言が大きなヒントになってくるが、結果として2人とも舞い上がらず、持っているものは出し切った。このアガらない、余分な力が入っていない、これが時空を自分のものにしている何よりの証。大きなものを得るために、いくつもの幸せを諦めたと言ったのは羽生選手。競技した選手すべての演技と得点を見ていたと言ったのは宇野選手。(他の選手への声援も聞きたくなくてイヤホンを直前まで離さないのが普通なのに)目的達成のために、目を見開いて全てを見ること。そして、よくよく考えることが何よりも重要なのだ。多くの人は時間と空間をフワッとしか捉えず、どさくさで済ませている。だから大切な場面で自分を見失うのだ。自分が自分でなくなるのだ。そう、すべての瞬間自分が自分であること。自分はこの瞬間何をすべきなのか、全て把握できていることが絶対重要で、それができれば運に一喜一憂する必要などなくなる。

 でも全ての時間と空間を自分のものにするって、何をどうすること? 簡単に言ってしまうと、「全てのことに心を込めること」。全ての言動にきちんと心臓と頭を使うこと。あたり前のようだけれど、みんな実はやっていない。それって疲れない?と言うかもしれないが、やってみてほしい。全てのことを心で、心臓で受け止め、行動に変えるのだ。 あなたは、羽生選手が一度肩にかけようとしていた日の丸の旗をたたんで戻して、改めて写真撮影に臨んだのを知っていただろうか。フェルナンデス選手がスペインの国旗を持っていなかったことを目にして、自分だけが国旗を背負うのはマズイと思ったのだ。その時に国旗に敬意を払って大切に扱う姿にもちょっと驚いた。何と言う23歳なんだろう。毎朝ベッドをきれいに整えてから出かけるという習慣もすごいが、まさにそれが「全てに心を込める」と言うこと。意識を込めるだけ。難しくないはずだ。

 ただし、嫌なこと困ったことは、いつまでも心臓に置いておかないで頭に上げて考えること。以前アドバイスされたのは、苦悩は胸に長く置いとかないで頭に移動させること。するとちゃんと考えが浮かんで、頭のてっぺんから上へ抜けていくからと。やってみたら本当にそう。どんなに苦しいこともちゃんと抜けていく。いつまでも胸でモヤモヤ悩んでいるからいけないのだと悟ったもの。感じるべきことは胸に置いて感じ、考えるべきことは頭に持っていって考える……。

 オリンピックのたびに、普段にはない感慨を凝縮して味わうことになるが、いつもそれっきりになってしまう。あんなに感動したのに2ヵ月もするとすっかり覚めている。でも、アスリートというよりは人間の天才、としての羽生選手の教えは何か体の中に残しておきたい気になった。いい歳をして彼に学んだこと……すべての時間と空間を自分のものにする方法。それが、どんなことに役立つかはわからない。わからないが、人生のどこかで思い出すのは間違いない。運に頼らず、惑わされず、人生を自分の思った方に進めていける。とても重要なことを見つけた気がしてちょっと鳥肌が立った。

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撮影/戸田嘉昭 スタイリング/細田宏美 デザイン/堀康太郎(horitz)

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