1. 清川あさみ×岩井俊二

2015.02.23

清川あさみ×岩井俊二

アーティスト・清川あさみが男性をモデルに刺繍を施す「男糸」シリーズ。第17回となるVOCE4月号(2月23日発売)は、映画監督・岩井俊二さんとコラボレーション。現在公開中の『花とアリス殺人事件』は、キットカットのショートムービー(2003年)から長編映画へと発展した04年『花とアリス』の前日譚。今回で清川さんが岩井さんのために設定したテーマは、桃山時代の天才絵師・長谷川等伯。

清川あさみ×岩井俊二

1 “初めて会った気がしない”ふたり。その理由は?

清川さんがMCを務める番組に岩井さんがゲスト出演をしたり、岩井さんもメンバーである音楽ユニット「ヘクとパスカル」とのコラボレーションの企画が進行していたり、と男糸の撮影以前にも交流があるふたり。そこで改めて清川さんとの初対面の印象を岩井さんに尋ねてみると

「初めて会った気がしなかったですね。作品は知っていましたが、本人の実像は知らなかった(笑)。共通の知り合いも多いんです。僕のところで助監督をやっていた行定(勲)とか、女優の伊藤歩、鈴木杏とか。でも清川さん自身があんまり“初対面”というようなものを感じさせない人なんじゃないかな」と言う。

一方、清川さんも“初めて会った気がしない! 本当にそう! その表現がそのまんま。私もずっと前から知っているような気がしました”とお互いの初対面の印象が一致。
さらに“岩井さんの『リリイ・シュシュのすべて』が大好きなんですけど、あの世界観が私とすごく繋がるところがある気がする。それも初めて会った気がしない理由のひとつかもしれないですね”と清川さんは言う。

2 『花とアリス殺人事件』主題歌の秘密

映画『花とアリス殺人事件』の公開と同時に発売された映画のオリジナルサウンドトラック『fish in the pool』。椎名琴音、桑原まこ、そして岩井さんもメンバーのひとり『ヘクとパスカル』が担当している。メンバー全員が作詞作曲をこなすが、今回『花とアリス殺人事件』の主題歌の作詞作曲は岩井さんの手によるもの。

「学生のときに、見よう見真似で自分の映画に音楽をつけていたんです。今回の『花とアリス殺人事件』の主題歌になっている『fish in the pool』という曲は、実はその学生時代に作ったもの。04年『花とアリス』の時にそれをちょっと思い出して、バレエ教室での練習の場面で鳴っている音楽として使っています。学生時代作ったものは日本語の歌詞がついていて、04年の『花とアリス』ではインスト、そして今回は英語詞をつけました。同じ曲なんですが、何かをぐるっと一周まわった感じですね。英語詞は初めてで新しい挑戦だったので僕も進化している(笑)」と岩井さん。

以前にも96年の作品『スワロウテイル』では、音楽プロデューサー小林武史さん、アーティストのcharaさんとYEN TOWN BANDのメンバーとしてアルバムもリリースしている。

「YEN TOWN BANDの時は、歌詞を小林さん、charaと3人で書いたんです。最初に僕が書いて、それを小林さんが修正して、次にcharaが直して、また小林さんに戻って、というプロセスで作ったんですね。でも僕にはスタート時以降、2回目の順番は回ってこなかったんですけど……(笑)。その時、自分が思っている歌詞と彼らが思う歌詞が全然違うな、って感じたんです。彼らは歌詞を音楽として捕らえている。でも僕は言葉として捕らえていて、5・7・5みたいになって(笑)、うまく音楽にはのらなかったんです」
それ以来、曲は作れるけれど、歌詞には苦手意識を持っていたという岩井さん。しかしある日偶然見た『ソングライターズ』というNHKの番組で、佐野元春さんをはじめとしたミュージシャンが歌詞について語っているのを見て、なるほど、と思ったそう。

「それまで歌詞って、みんな自然に書いていると思っていたんですけど……。いい意味で作為的というか、非常に考えて作られていることがわかったんです。そこで初めて歌詞というものが理解できた。1音目、2音目があって、その2音目に乗せたほうが響きとして効果的なものがある、ということに気づいたんです。それから歌詞をつけるのが面白くてたまらない。言葉のパズルみたいなんですよね。それで歌詞を作るのにハマったんですよ(笑)」

横で話を聞いていた清川さんは“それは本質キーワードでもあげた【こだわり】と【ものに対する執着】ですね(笑)”と一言。
「なんかそういうのが好きなんですよ。“きた! きた!”って思う感じが」と岩井さんは笑う。

3 【清川あさみ×ヘクとパスカル】コラボレーションのきっかけは?

岩井さんもメンバーのひとり「ヘクとパスカル」のミニアルバム『ぼくら』を3月18日にリリース! CDジャケットを清川さんが担当するコラボレーションが進行中!
”私の個展『TOKYOモンスター』に岩井さんと一緒にヘクとパスカルのメンバーも見に来てくれたんです。その時、岩井さんが音楽もやっているっていうのを聞いて、面白いなぁ、一緒にやりたいなぁ、って思ったのがコラボのきっかけ”と清川さん。
「”ヘクとパスカル”のメンバーは、子ども時代の世界をそのまま残したような3人なんですよ。世代は違うけど、そこだけが一致している。それで音楽の波長が合うんです」と岩井さんは言う。

“CDジャケットで絵本『ココちゃんとダンボールちゃん』のキャラとコラボさせてもらうんですけど、あの作品は私が19歳の頃に描いたもの。子ども時代の揺れる気持ちを表現した私自身の話なんですが、その時の気持ちと「ヘクとパスカル」の世界観がぴったりだった”と清川さん。

また今回の男糸のコラボレーションについて岩井さんは「どうやって刺繍するの? 作品にどれくらい時間がかかるの?」と清川さんに逆質問。

清川さんは“作品にもよるけど、男糸は1週間くらいかな。私は作品を作っているときは、基本閉じているんですよ。だから暗いかもしれない。撮影や取材、プライベートでも人に会うときは社交的で開いているんですけど……。だからみんなが見ている清川あさみと作品を作っている私は、真逆かも(笑)。岩井さんはどうですか?”

「僕の場合は、仕事自体が人と一緒に作る部分も大きいので、逆に暗く閉じている部分を隠しきれないんですよ(笑)。気持ちが奥に引っ込んでいる時に、出会いがしらのように人に会ってしまったり……」と苦笑いの岩井さん。

“でも岩井さんは特殊って気がする。普通、映画監督ってアレコレ指示を出すでしょう? でも岩井さんの場合は、監督の小さく深いこだわりにみんながついていって、手を差し伸べたい、何かしてあげたいと思わせるパワーとオーラがあるんですよ。男女問わず、母性を引き出されるような感じがしますね”と清川さんは語る。

おりしも男糸の撮影当日は岩井さんの誕生日。清川さんのアイディアでサプライズを決行。岩井さんのスタジオ入りの時に、電気を消して、ハッピーバースデイの音楽を鳴らし、驚く岩井さんに花束を渡した清川さん。サプライズもコラボレーションも大成功で終了!


清川あさみ
アートディレクション、衣装、広告、美 術作品まで幅広く活躍するアーティスト。 岩井監督もメンバーのひとりである音楽 ユニット「ヘクとパスカル」のミニアルバム 『ぼくら』(3月18日発売予定)とコラボ予定。

岩井俊二
1963年宮城県仙台市生まれ。1988年よりドラマ、ミュージックビデオ、CFなど多方面の映像作品で注目を浴びる。
1995年に初の長編映画作品『Love Letter』を発表。その後『スワロウテイル』『花とアリス』『ヴァンパイア』など話題作を監督。音楽ユニット「ヘクとパスカル」でも活動中。
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『花とアリス殺人事件』が公開中!
岩井監督の初の長編アニメーション作品。04 年公開作品『花とアリス』の前日譚となるエピ ソード。当時主演した蒼井優と鈴木杏が声優 として参加している。http://hana-alice.jp/
また前作同様、キットカットともコラボレーション中。http://nestle.jp/brand/kit/hanaari/

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VOCE4月号(2月23日発売)

男糸 danshi Vol.17
岩井俊二さん編

完成した作品は、ぜひVOCE本誌でチェックして!

VOCE4月号 目次の立ち読みは
コチラから!>>


photograph:Baku Kobayashi
Hair&make-up:SHUTARO