1. 「スマホ脳」から脱する、簡単・脳トレ術【ながらラジオのすすめ】

2018.04.22

「スマホ脳」から脱する、簡単・脳トレ術【ながらラジオのすすめ】

もはや私たちの生活に不可欠のスマホは便利なアイテムである一方、「聞く力」を衰えさせるという一面も。そんなスマホばかりに頼る「スマホ脳」の危険性について、医学博士・「脳の学校」代表の加藤俊徳さんにお話しを伺いました。

「スマホ脳」から脱する、簡単・脳トレ術【ながらラジオのすすめ】

スマホのおかげで日々の生活が格段に便利になった。一方で、スマホが私たちの脳に与える好ましからざる影響も注目されつつある。

ケータイが出てくる前は、電話をかけるときも相手の電話番号を憶えていたりしたが、今は、自分で電話番号など記憶しなくなった。脳の記憶をつかさどる部分を使わなくなったのだ。

スマホのアプリの乗換案内は便利だが、乗り換えの順番や路線図を頭の中で描いたり、途中駅の風景を想像することがなくなった。また、レストランへ行くとき、最初に行き方をスマホでチェックしてから行かないと、単純なことでも難しく感じてしまう、という経験はないだろうか? これらの例はみな、脳を使わなくなってきたという具体例である。

聴覚系部位は人間の脳の根幹

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問題は、この中でも「聴覚系をつかさどる部位」を使わなくなり衰えていることだ。脳というのは、聴覚系や視覚系、思考系といったように、部位によって働きが違う。ところが、現代人のようにテレビやスマホばかり見て、脳の成長が視覚系に偏ってしまうと、脳全体の成長バランスが悪くなって、日常生活の多くの場面に支障をきたしてしまう

視覚が優位になった場合、どうしても聴覚がなおざりになってしまう。聴覚系は、理解系や記憶系と密接な関係にある非常に重要な脳の部位。聴覚系の働きが阻害されると、わたしたちは物事をきちんと理解し記憶に基づいて行動できなくなる。

逆に、きちんと聞くことができるようになると、脳の各部位が鍛えられ、それをきっかけにさまざまな脳の部位を偏りなく、広く使えるようになる。だからこそ、聴覚系の脳部位をないがしろにしてはいけない。その意味で、聴覚系こそ人間の脳の根幹をなすと言っても過言ではない。

拙著『脳を強化したければ、ラジオを聴きなさい』でも詳しく解説しているが、現代人は耳で他人の生の言葉を聞く機会が激減し、どんどん「自閉化」している。他者との交流時間が不足し、コミュニケーション能力が低下して「自閉化=非社会化=共同体からの疎外」が進んでいる。

この原因の多くはテレビやパソコン、スマホを見てばかりで、視覚優位の生活環境になっていることだ。その意味で、現代人は、映像・文字情報に頼りすぎており、「聞くこと」よりも視覚に引っ張られる、「テレビ脳」「スマホ脳」になっている。

その中でも最も危険なのが「スマホ脳」だ。視覚系が優位になると、聴覚系の活動は半減する。スマホはテレビ以上に、主体的に「見る」というよりも、受動的に「見せられている」状況をつくりだす。視覚系は、聴覚ほど脳の各部位をバランスよく活性化させることはできない。これが、脳の理解系や思考系の活動をも著しく低下させる。

加えて、スマホは、外部記憶装置そのもので、人の海馬をやる気にさせない。出番のない海馬は、記憶しようともしなくなる。その結果、前後の記憶が飛びやすくなり、注意散漫や物忘れが頻発する。スマホ脳で意識が飛びやすいことは、歩きスマホをしている人が他人や物にぶつかりやすいことからも、容易に想像できる。

聞く力が弱い人は問題も多い

あなたの周りにはこんな人はいないだろうか? これらはみな、聴覚系が劣っている、あるいは未発達な人たちである。

(1)人の話を聞かない

(2)怒りっぽい

(3)相手の気持ちを察することができない

自分だけ一方的にしゃべって人の話を聞かない人。聞く力は、右脳と左脳の両方にあるが、こういう人は、右脳の「聞く部位」が働いていないことが多い。自分以外の音に注意が向かない、こういう人は脳画像を見ると一目瞭然だ。また、人が話をしているとき、話を聞かず、自分が次にしゃべることばかり考えている人も、やはり聴覚系と直結している記憶系が劣っていることが多い

怒りっぽい人。こういう人は、家族や同僚に対して、つねにイライラを抱えている。しかし、実は相手を理解する以前に、そもそも相手の話をちゃんと聞けていないケースが多いのだが、本人はそれを自覚していない。こういう人は、怒りの原因が自分の側にあることに気づかず、どうにもならない感情を相手や物にぶつけてしまう。スマホをいじっている人に声をかけると、イラッとした態度になってしまうのは、聴覚系がかなり劣っているからだ。

オフィスの新人にありがちなのが、相手の気持ちが読めない人。お客様から電話がかかってきても、相手が困っているのか、怒っているのか、泣いているのか、声から判断・想像ができず、判断をあやまってしまう。「耳で空気を読めない」のだ。視覚系優先で生きてくると、こうなってしまうが、実はこういう若者は多い。ただ、視覚系優位といっても、狭い画面を眼球を動かさず眺める習慣によって、耳だけでなく、目でも空気が読めない人が急増している

こんな聴覚系の問題を解決するのが「ラジオ」である。人の言葉が一方的に流れてくるラジオは、「よく聞く」訓練にはもってこいで、流しているだけで聴覚系や理解系の部位が鍛えられる。ラジオを聴く、という行為は、実はただ耳に音が入ってくるのではなく、脳が音を選んで聞き続けている行為。これは脳を強化するトレーニングそのものだ。

さらに、ラジオは声だけでいろいろと想像する。これも脳の各部位を刺激してくれる。ラジオを聴きなれた人は、パーソナリティーのその日の声を聴き、「あ、きょうは元気がないな」などと判断できる。「耳で空気が読める」ほど、聴覚系が発達している証拠だ。

「ラジオ脳」があなたを救う

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ここで私はみなさんに「ラジオ脳」になることをおすすめする。「ラジオ脳」とは、聴覚系の部位が高度に発達し、それにより、聴覚系の部位と関係の深い、その他の7つの脳の部位(記憶系、思考系、視覚系、理解系、伝達系、感情系、運動系)の機能も同時に強化された脳のこと。意識的にラジオを聴くことで、このラジオ脳を手に入れることができる。

また、私がおすすめしたいのが「ながらラジオ」。「ながらラジオ」は、聴覚系の部位とその他の部位を同時に刺激し、鍛えることができる。

たとえば、料理や掃除などの家事をしながらラジオを聴いてみる。この場合、ラジオの音声を耳の器官で感受して聴覚系を使い、体を動かすことで運動系を同時に使っていることになる

まさに、聴覚系と運動系の部位を同時に鍛えているわけだ。あるいは、ラジオのスポーツ中継や、ドラマ、スタジオ外からの実況レポートなどを聴きながら、その光景を想像してみてはどうだろうか? この場合、聴覚系と視覚系の部位を同時に働かせていることになり、これもまたふたつの部位を鍛えていることになる。

脳というのは非常に正直で、使えば使うほど、鍛えれば鍛えるほど、成長する。だから、脳トレは何歳になっても始めるのが遅すぎるということはない。その脳トレの中心にくるのが「聞く力」、聴覚系の鍛錬。それがラジオで簡単に、そして有効にできる。

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『脳を強化したければ、ラジオを聴きなさい』

【著者プロフィール】
加藤 俊徳(かとう としのり)

医師、医学博士。株式会社「脳の学校」代表。加藤プラチナクリニック院長。昭和大学医学部、同大大学院卒業後、1991年、子どもの脳活も計測できるfNIRS法を発見。その後、アメリカ・ミネソタ大学放射線科 MR研究センター、慶應義塾大学、東京大学などで脳の研究に従事。胎児から100歳を超えるお年寄りまで1万人以上のMRI脳画像とともにその人の生き方を分析。2006年、株式会社「脳の学校」を創業。2013年、加藤プラチナクリニックを開設。ビジネス脳力診断、発達障害や認知症の診断・予防医療を実践。

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