1. 5月病を引き起こす、「鉄欠乏」と「糖質過多」【食生活の乱れに注意!】

2018.05.06

5月病を引き起こす、「鉄欠乏」と「糖質過多」【食生活の乱れに注意!】

「食生活の乱れ」が単なる栄養不足にとどまらず、心の危機を招く結果にならないよう、食生活で注意すべきことについて、精神科医の奥平智之氏にお話しを伺いました。

5月病を引き起こす、「鉄欠乏」と「糖質過多」【食生活の乱れに注意!】

新年度が始まって3週間。進学、就職、転職、転勤……新たなスタートにまだまだ慣れない人も多いだろう。変化の時期は「心の危機」の時期でもあります。特に大きく環境が変わったり、一人暮らしが始まったり、という人は注意が必要だ。

精神科医の奥平智之氏が近著『マンガでわかる ココロの不調回復 食べてうつぬけ』から心の危機を回避する食生活を解説する。

「鉄」欠乏が引き起こす不調

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「食生活の乱れ」というと、朝食を抜くことや、インスタント食品に偏るなどのイメージを持つかもしれない。それももちろん問題だが、朝はトーストとコーヒー、昼はおにぎりとスープ、夜はパスタとワインといった、一見普通に見える食事でも危険だ

心の危機を招く原因に、心や体を健全に働かせる栄養素の不足がある。パンやパスタ、ごはんなどの糖質中心の食事になると、肉や魚の動物性タンパク質や、野菜などが不足しがちになり、そこに含まれる栄養素も摂取できなくなる。

特に注目したいのは、鉄だ。鉄は赤身の肉や魚に豊富に含まれている。不安やうつをやわらげるセロトニンや、ときめきを感じさせるドーパミンなどの脳内の神経伝達物質は、作る過程で鉄が必須となっている。

また、鉄が欠乏すると、全身の細胞のエネルギー産生工場であるミトコンドリアの機能も低下する。神経をはじめさまざまな細胞や臓器の機能低下につながるため、鉄欠乏の症状は多岐にわたる。イライラ、憂うつ、不安、疲れやすい、冷え、頭痛、髪が抜けやすい、アザができやすい、眠りが浅い、爪が平坦で割れやすいといった症状があらわれる。

タンパク質やビタミンB群、亜鉛、マグネシウムなどの栄養素も心や体に重要な栄養素だが、過労や寝不足などのストレスがかかるとより多くの量が必要となる。また、ストレス状態が続くと、体内に慢性の炎症が起こりやすくなる。「炎症体質」になると鉄の吸収や利用が低下し、鉄欠乏の状態となる。

甘くなくても糖質過多は炎症体質・ストレスの原因に

糖質過多も体にとってはストレスで、炎症体質につながる。糖質過多に伴う腸内環境の悪化や脂肪肝、肥満、そしてタンパク質の糖化などが炎症の原因になるからだ。

一見フツーに見える食事の多くは、実は、糖質過多。糖質とは、炭水化物から食物繊維をのぞいたものを言うが、白いごはんやパン、パスタには、甘くなくてもたくさん糖質が含まれている。

ストレス状態になると、副腎(腎臓の上にある臓器)からストレスに対抗するためのホルモン「コルチゾール」が分泌される。この状態が長く続くと、副腎がオーバーワークとなって次第に疲弊し、コルチゾールが分泌されにくくなる。そして「朝起きるのがつらい、疲れやすい」などの症状が出て仕事のパフォーマンスが下がる。

また、糖質過多により血糖が乱高下する生活を続けると、低血糖になるたびに、コルチゾールが分泌されるため、副腎が徐々に疲れてしまう。コルチゾールは、ストレスや炎症、低血糖を緩和してくれるとても大切なホルモン。ストレスに強くなる、また炎症体質になりにくくするには、副腎を弱らせないことが重要だ。具体的には、夜更かしをせずによく寝ること。そして、良質なタンパク質と脂質をしっかりとりながら、コーヒーなどのカフェインを控え、ビタミンCとビタミンB群、亜鉛、マグネシウムなどの栄養素を十分にとるのがいいだろう。

特にビタミンB群とタンパク質、そして男性は亜鉛、女性は鉄をまず意識的にしっかりとると、疲労や憂うつ感が回復してくるケースが多い。まず食べてほしい食品は良質な肉。牛肉や豚肉などは、タンパク質、ビタミンB群、鉄、亜鉛などを豊富に含んだスーパー食品だ。

また、抗炎症作用のあるEPAが豊富な青魚や、腸内環境を整える納豆などの発酵食品も意識的にとるとよい。

糖質過多にならないよう、注意したいのは間食だ。手軽に食べられる食品のほとんどは糖質。間食には、ゆで卵やくるみ、アーモンド、小魚などがいい。ココナツバターを冷やして固めて食べるのもおすすめ。

漢方薬でゆるやかに心の元気を回復させる

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栄養状態の改善とともに、漢方薬の使用も効果的だ。春は、東洋医学的には五臓でいう『肝』の季節とされる。肝を良くする=イライラ解消には、柴胡(さいこ)という生薬を含む漢方薬がおすすめだ。

ストレスをうまく言葉にできず周囲に打ち解けないタイプには、抑肝散(よくかんさん)。加えて、胃腸が弱ければ抑肝散加陳皮半夏(よくかんさんかちんぴはんげ)、緊張して手足が冷えるなら四逆散(しぎゃくさん)。

おしゃべりが好きで周囲に打ち解けやすいタイプには、加味逍遙散(かみしょうようさん)。

神経質で何でもないような細かいことに悩み、驚きやすく、ドキドキしやすいタイプには、柴胡加竜骨牡蠣湯(さいこかりゅうこつぼれいとう)。柴胡剤は、脇腹からみぞおちあたりにかけての緊張や苦しい感じがみられる人に効果があり、これらの漢方は心の不調によく使われる漢方薬だというから、覚えておきたい。

漢方にも、食事を改善することで体調を整える「食養生」という考え方がある。漢方的には春は「酸味」をつかうとよいだろう。酸味は肝の働きを助ける。また、酸味のある食品は、鉄の吸収を促進するので酢の物やレモンを使った食品などを積極的に食べるのがおすすめだ

新生活のスタートには、夢や期待があふれている。それをストレスでつぶしてしまわないためにも、「何を食べようか」という小さな選択の積み重ねが重要なのだ。いま手にとったその食品が、自分の新生活を支えてくれる味方なのか、あるいは敵なのか、ぜひとも考えて選びたいものだ。

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マンガでわかる ココロの不調回復 食べてうつぬけ

【著者プロフィール】
奥平 智之(おくだいら ともゆき)

精神科専門医、漢方専門医、認知症専門医。医療法人山口病院精神科部長/日本栄養精神医学研究会会長。日本大学医学部卒後、日本大学医学部精神医学系精神医学分野に入局。日本大学医学部附属板橋病院、東京都立広尾病院の神経科を経て、埼玉県川越市にある山口病院に勤務。日本大学病院東洋医学科と東京女子医科大学東洋医学研究所(非常勤講師)で漢方外来、新宿溝口クリニック栄養療法外来・セミナー講師を経て、2016年より日本栄養精神医学研究会を創設。「メンタルヘルスは食事から」をモットーに、食事や栄養療法、漢方治療を重視した精神科治療を行っている。

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