1. 岩盤浴より「入浴」の方が健康効果が高い【医者が教える正しい健康情報】

2018.05.13

岩盤浴より「入浴」の方が健康効果が高い【医者が教える正しい健康情報】

「健康な人がわざわざ毒出しを心掛ける必要はありません。」そう話す内科医の奥田昌子さんに、日常生活の中で健康に貢献してくれる「入浴の3大効果」について伺いました。

岩盤浴より「入浴」の方が健康効果が高い【医者が教える正しい健康情報】

このところ流行している「デトックス」。デトックスは英語で「解毒」を意味する言葉で、日本では、知らないうちに体内にたまった「有害物質」を体から出すための健康法として知られています。

たとえば、岩盤浴や半身浴で汗をかいたり、「毒出し」効果のある野菜やサプリを摂取したり、感動して涙を流したりして「毒」を出すと、代謝が上がって、肥満や肌荒れ、冷え性などに効果があり、老化防止や免疫向上にも効果がある――。ちまたの「デトックス健康法」はこのように説明されることが多いですが、これははたして真実なのでしょうか。

岩盤浴というのは、天然の岩石や、岩石を固めて作った板を加熱して、その上に横になって体を温める健康法です。しかし、拙著『実はこんなに間違っていた!日本人の健康法~医者が教える「正しい健康情報」の見抜き方~』でも詳しく解説していますが、実のところ出てくる毒の成分が何で、どこから、どういう仕組みで、どのくらい出てくるのかなどの科学的な説明はありません。

「ベタベタの汗」は毒ではない

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汗も涙ももとは血液で、その成分はほとんどが水です。そこにナトリウムをはじめとするミネラルと、ブドウ糖、さらに涙にはビタミン、汗にはアンモニア、尿素などが溶けています。

デトックスで毒が出ることの証拠として、初めはさらさらだった汗が、次第にベタベタした汗に変わることを挙げる人がいます。汗がベタベタするのは「毒が混じっているから」だというのですが、これはちょっと違います。確かに、汗は出続けるうちに成分が変わります。といっても毒が出てくるわけではなく、塩分の濃度が上がるのです。

出始めの汗は水っぽく、うっすら汗ばむくらいならベタつくことはありません。塩に含まれるナトリウムは体の機能を維持するうえで欠かせないものなので、体から簡単には失われないようにできているのです。

しかし、汗をかくような状況が長時間続くと、しだいに水に混じって塩が出るようになり、汗の味が塩辛くなります。それでも健康な人であれば、汗から有害物質が検出されることはありません。

また、汗をかくことと代謝は無関係です。基礎代謝は筋肉や脂肪の量、そして体内のホルモンの働きで決まります。岩盤浴や半身浴で汗をかけば、体から水が出た分、一時的に体重は減るでしょう。ですが、これは基礎代謝が高まったからではないですし、このおかげで脂肪がつきにくい体質になったりすることも考えられません。

岩盤浴の健康効果は、体をじっくり温めることで血のめぐりがよくなることです。これにより全身に新鮮な酸素と栄養が行き渡れば疲労回復に役立ちます。免疫機能が高まる可能性もあるものの、効果があるのは体が温まっている間だけです。

血のめぐりは普通の入浴でも十分よくなります。そして入浴には、岩盤浴にはない、あと3つの効果があります。下図を見てください。1つは体にかかる水の圧力によるものです。お湯に深く身を沈めると、体全体に大きな水圧がかかります。これがちょうどマッサージのように手足の血液を押し流してくれるので、血液やリンパ液がスムーズに流れ、心臓の働きが穏やかに高まります

入浴には、岩盤浴にはない三つの効果がある

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(図:大和書房提供)

「宿便」など存在しない!

もう1つが、お風呂では浮力が働くことです。水中では重さがおよそ10分の1になるため、体を支える骨や筋肉を休ませて心も体もリラックスできます。整形外科や神経内科などで治療を受けている人が温水プールでリハビリをするのも、血液の流れがよくなることで痛みが和らぎ、水の浮力によって無理なく運動ができるからです。

そして3つめが皮膚の汚れを取り去る効果です。ごしごしこすらなくても、お湯につかるだけで汗などの皮膚の汚れがかなりきれいになります。

こういう効果はシャワーにはほとんど期待できません。せっかく家にお風呂があるのに、週に1回岩盤浴に行って、普段はシャワーで済ますというのは非常にもったいないですね。家庭のお風呂の健康効果をもっと活用してください。

汚いもの、有害なものが体にたまっていると言われれば、誰だって不安になります。しかし、取り越し苦労にすぎない健康法は、このほかにもあります。

たとえば「宿便」です。宿便は腸の壁に張りついた便のことで、時に何週間も、何カ月も体内にとどまるとされています。「どんな人にも3~5kgたまっています」と具体的な数値を載せたウェブサイトもあり、考えるとおそろしくなってしまいます。

でも、大きな病気のない健康な人には宿便は存在しません。大腸の手術や大腸内視鏡検査をする前に下剤を使って腸を空っぽにしますが、そのとき便が数キロも出るようなことはありませんし、お腹のCT検査やMRI検査で得られた画像に、そんなものが写っているのを見たことがある医療関係者は1人もいないでしょう。

便が腸の壁にずっとへばりついていられない最大の原因は、腸の壁の細胞が頻繁に生まれ変わることです。壁の細胞はだいたい3~4日ではがれ落ち、1週間もしないうちに壁全体の細胞が入れ替わるとされています。壁に何かが張りついていても、このとき一緒にはがれます。何キロもの便が何カ月も腸にとどまることは考えられません。

「毒出し健康法」という発想のヒントになったのは、病院で行われている「医療用デトックス」でしょうか。これは、薬物を過剰に摂取した患者さんの体から毒を取り除くための 治療法で、大量のぬるま湯で胃を洗う、機械を使って血液透析するなど、さまざまな方法があります。

健康な人がわざわざ毒出ししなくていい

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いずれも命を救うための非常手段であり、健康な人がわざわざ毒出しを心掛ける必要はありません。なぜなら、誰の体にも、有害な物質を強力に消し去る仕組みが備わっているからです。それは右の脇腹にある肝臓で、かたときも休むことなく、黙々と毒素を分解してくれています。

また、おなかの左右にある腎臓は不要になった成分を尿に捨てています。体には体内の物質の濃度を一定に保つ働きがあり、本来は必要な物質であっても、濃度が高くなりすぎると排泄するようになっています。つまり、一生懸命汗をかこうとするより、腎臓を含めて体全体が本来の機能を十分に果たせるようにするほうが、よほどデトックスに役立つわけです。

英国の国民保険サービス(NHS)は、日本の厚生労働省にあたる英国保健省が主導する国営の医療保障制度です。このNHSのウェブサイトにこう書いてあります。

「デトックスには何の根拠もなく、いい結果が得られるという保証もありません。(中略) 健康を守る唯一の方法は、節度をもって食べ、定期的に運動することです。夢の特効薬は存在しません」

新鮮な野菜を食べる、きれいな水を飲む、お風呂で汗を流す、ぐっすり眠る、映画を観て思い切り泣く。よい生活習慣は心と体にもとから備わった力を引き出します。精巧で、とてつもない機能を持つ私たちの体に「健康法」は無用です。

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実はこんなに間違っていた!日本人の健康法~医者が教える「正しい健康情報」の見抜き方

【著者プロフィール】
奥田 昌子(おくだ まさこ)

内科医。愛知県出身。京都大学大学院医学研究科修了。博士課程にて基礎研究に従事。生命とは何か、健康とは何か考えるなかで予防医学の理念にひかれ、健診ならびに人間ドック実施機関で20万人以上の診察にあたる。大手化学メーカー産業医を兼務。著書に『欧米人とはこんなに違った 日本人の「体質」』(講談社ブルーバックス)、『健康診断 その「B判定」は見逃すと怖い』(青春新書インテリジェンス)、『実はこんなに間違っていた! 日本人の健康法』(大和書房)などがある。

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