1. 「睡眠不足」は○○で改善できる!【名医が教える健康習慣】

2018.06.03

「睡眠不足」は○○で改善できる!【名医が教える健康習慣】

睡眠時間を削って仕事をしたり、眠りが浅くても生活習慣を改善せず、そのままにしてしまっていませんか。今回は、そんな現代人が抱えがちな“睡眠不足”の対処法について、『最強の働き方』『一流の育て方』の著者であるムーギー・キム氏に解説していただきました。

「睡眠不足」は○○で改善できる!【名医が教える健康習慣】

世の中には、実に多種多様な「健康書」が氾濫している。しかし医者によって言っていることも大きく違い、何を信じたらいいのかわからない。「人生100年」時代、本当に信頼できて、誰でもお金を掛けずに毎日できる簡単な健康習慣とは、いったいどのようなものなのか。

4月26日、東洋経済オンラインのメルマガでもおなじみのムーギー・キム氏の渾身の著作『最強の健康法―世界レベルの名医の本音を全部まとめてみた』(SBクリエイティブ)が、『ベスト・パフォーマンス編』と『病気にならない最先端科学編』の2冊セットで刊行された。本書は日本を代表する50名に上る名医・健康専門家による直接解説を、東大医学部で教鞭をとる中川恵一氏、順天堂大で教鞭をとる堀江重郎氏が二重三重にその正確性をチェックしたうえで制作されている。

東洋経済オンラインでは同書を元に、多くの名医たちが実践しているおカネの掛からない確かな健康法を紹介していく。今回は、睡眠不足の対処法を解説する。

「睡眠不足に関しては、まず、そこには『中長期の病気リスクが潜んでいる』ということをしっかり認識し、もっと真剣に睡眠時間を確保する工夫をしてほしいですね」

こう話すのは、国立精神・神経医療研究センター精神保健研究所、精神生理研究部で部長を務める医学博士、三島和夫氏である。

前回の連載で見てきたように、睡眠中には、脳や体のさまざまな調整作業が行われる。睡眠不足によって脳の調整作業が損なわれれば、認知症など脳の病気のリスクが高まる。

睡眠中心で生活を組み立てるべき

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睡眠不足によってインスリンが十分に効果を発揮できないと、高血糖になる時間帯が増え、糖尿病になるリスクも高まる。一事が万事で、睡眠不足は病気の温床になるのである。

「特に忙しいビジネスパーソンにいえることだと思いますが、皆さん、十分に働いて遊んで、その余った時間に眠るという感覚ではありませんか? しかし、睡眠不足に潜む病気リスクを考えれば、生活はまず日中の疲れを回復するための休養、つまり睡眠ありき、睡眠中心で組み立ててほしいくらいです」

では、質の良い睡眠を十分とるために、我々ビジネスパーソンはどのようなことを心がけたらよいのだろうか。

三島氏がすすめる方法が「1日を0時から数える」という心がけをもつことだ。

通常、私たちは「朝、起きた時間」から1日を数える。つまり1日は覚醒にはじまり、睡眠に終わると、当たり前のように考えている。

しかし、そのように考えていると「起きてから、あれをして、これをして……」などと仕事と余暇の優先順位が高くなり、反比例的に、睡眠の優先順位が最後になってしまう。その発想を逆転させて、睡眠に一番の重きを置くために「1日を、睡眠からはじまるようにして組み立てよう」というわけである。

「1日24時間から、まず睡眠時間、そして仕事の時間、通勤時間と引いていって、余った時間を余暇として過ごせばいい。『寝る時間がない』と言いながら、実際には睡眠を後回しにして無駄なことをしている場合も多いはず。そこは自己責任で生活を見直し、6〜7時間を目安に、十分な睡眠時間を確保してほしいと思います」

中長期のリスクにまでは、なかなか頭が回らないものだが、将来の健康のために、「1日はまず睡眠からはじまる」という事実を、くれぐれも心にとめておこう。

"ショートスリーパー"は病気リスクが高まる

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世の中には、1日の睡眠時間3〜4時間という、いわゆる「ショートスリーパー」もごくまれに存在する。また、睡眠は最初の90分が特に重要で、90分ワンセットで考えることが大切であると主張する人もいる。

とはいえ、仮に睡眠3〜4時間という生活を続ければ、大半のケースで脳と体の病気リスクは確実に高まるという。

『短時間睡眠法』は、要するに、短時間で深く眠ればいいという考え方です。しかし、これには過去50年間、世界中の研究者がトライして、実は一つとして成功例がありません。世間では声高に短時間睡眠法を提唱している人もいますが、科学的根拠に乏しいため、それを提唱する医者はメディアでは大騒ぎしても、学会では一言も発言しない。それが実情です」

睡眠には、深い眠りと浅い眠りがあり、眠っている間、交互に繰り返している。こう聞くと、どうしても深い眠りのほうが重要に思えてしまう。だから「短時間で深く眠ればいい」という短時間睡眠法の論理は、納得できる面もあるように思われる。

しかし、それが大きな勘違いだと三島氏は指摘する。

「単純に説明すると、体を休ませる眠りと、脳を休ませる眠りは違うと考えていいでしょう。動物の眠りが浅いのは、人間ほど大脳が発達していないからです。人間は大脳が劇的に発達したために、もともと浅い眠りだけだったところに、大脳をしっかり休ませるための睡眠も必要になりました。つまり深い眠りは、脳の発達に応じて、後からつけ足された機能なのです」

深い眠りと浅い眠りには、それぞれ違った役割がある。そのどちらが欠けても、心身の健康は保たれない。「短時間で深く眠ればいい」という考え方は、間違いなのである。

不眠対策には認知行動療法

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病院で「眠れない」というと、睡眠薬を処方されることが多い。かつては、「脳の活動を強制的に落とせば眠れる」という考え方で強い睡眠薬が使われていたが、副作用が明らかになったことから、現在は、安全性が高まった代わりに効果がマイルドな薬に置き換えられているという。

薬の服用で特に注意したいことは、医師によっては睡眠薬の過剰処方になることがある点だ。安全性が高くなったとはいえ、服用量が増えると副作用のリスクも高まる。

そんな中、近年、薬物療法と同等か、あるいはそれ以上の効果があるとして主流になりつつあるのが認知行動療法だという。

これは、睡眠に対する患者の不安や過剰な期待をカウンセリングでとり除きつつ、かえって不眠症を悪化させている誤った睡眠習慣を改善することで、徐々に眠れるようにしていく治療法だ。

「眠れないときに無理やり寝ようとする、ベッドにしがみつくのが問題です」と三島氏は強調する。

たとえば、不眠症患者の多くは、「今晩も眠れないのでは」という不安を抱えながら、ベッドに向かうと交感神経の緊張などで覚醒度が高まり、余計に眠れなくなってしまう。

現に、眠ろうと身構えないソファや電車内などではすぐに眠ってしまう患者も多いという。

そのため、認知行動療法では、これ以上起きていられないほど眠気を感じるまでは、ベッドに横たわらないように指導するという。これが睡眠不足の人への指導とまったく異なる点なのである。

睡眠時間の確保を習慣づける

すでに医師向けのガイドラインでは、薬物療法で効果が出にくい患者に対しては、認知行動療法を行ってみるように推奨されている。

ただし、現在、日本では認知行動療法ができる施設が少ない上に、保険適用外となっている。教育、制度共に拡充が求められる分野だと三島氏は語る。

中長期的な睡眠不足は生活習慣病リスクを上げることを心にとめ、1日を0時から数えて睡眠時間の確保を優先させる習慣をもつことからはじめよう。

三島氏が言うように、体を休める眠りと脳を休める眠りは違う。動物と違い人間だけが大脳を大きく発達させただけに、その眠り方にも人間らしい工夫が必要なのだ。

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【著者プロフィール】
ムーギー・キム

『最強の働き方』『一流の育て方』著者。1977年生まれ。慶應義塾大学総合政策学部卒業。INSEADにてMBA(経営学修士)取得。大学卒業後、外資系金融機関の投資銀行部門にて、日本企業の上場および資金調達に従事。その後、世界で最も長い歴史を誇る大手グローバル・コンサルティングファームにて企業の戦略立案を担当し、韓国・欧州・北欧・米国ほか、多くの国際的なコンサルティングプロジェクトに参画。2005年より世界最大級の外資系資産運用会社にてバイサイドアナリストとして株式調査業務を担当したのち、香港に移住してプライベート・エクイティ・ファンドへの投資業務に転身。

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